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民主活動家から権力者に。とうとう大統領への野心を表明したアウン・サン・スー・チー氏

 

 来日中のミャンマーの民主活動家アウン・サン・スー・チー氏は「政党の党首で国のトップになりたくない人がいるのか」と述べ、大統領への就任に強い意欲を示した。民主化運動の星として国際的にも著名なアウン・サン・スー・チー氏だが、政治の表舞台に立ったことで、徐々に権力者としての顔に変貌しつつある。

 アウン・サン・スー・チー氏はミャンマーの民主活動家。ミャンマーの軍事政権によって長年軟禁状態に置かれていたが、ミャンマーの民主化の進展にともなって、2010年に自宅軟禁が解除された。さらに2012年には選挙に立候補し国会議員となっている。
 アウン・サン・スー・チー氏は非暴力民主化運動の象徴であり、欧米社会を中心に極めて評価が高い。ただ彼女が純粋な民主活動家なのかというと必ずしもそうとはいえない面がある。

 アウン・サン・スー・チー氏の父親は、ミャンマーの独立運動を主導し、後に暗殺されたアウンサン将軍である。アウンサン将軍の独立運動やその後の暗殺には英国の諜報機関MI6が深く関与しているといわれ、娘のアウン・サン・スー・チー氏も英国との関係が極めて密接である(本人は英国生活が長く、英国人の夫も諜報機関との関係が取りざたされている)。

 ミャンマーの国民は非民主的な軍事政権に反発する一方、植民地として搾取してきた欧米に対しては複雑な感情を持っている。これまでアウン・サン・スー・チー氏は民主化運動の星として国民的な英雄だったが、最近は国民の態度にも変化が出てきている。これまで声援を浴びることしかなかった遊説先でブーイングを受けるケースが出てきたのである。

 経済成長が著しいミャンマーでは、かなり強引な工場建設が行われており、各地で反対運動が起こっている。だがアウン・サン・スー・チー氏は欧米資本による工場建設については基本的に容認する姿勢を取っており、一部の国民から反発を受けているのだ。
 またミャンマー西部のアラカン州では、多数派の仏教徒が少数派のイスラム教徒の村を焼き討ちするという凄惨な人権弾圧が発生し国際問題にもなっているが、基本的にアウン・サン・スー・チー氏はこの問題を避けているとして批判が出ている(本誌記事「ミャンマーで大規模な人権弾圧が発生。だが大統領になりたいスーチー氏はこれを無視」参照)。

 理想論だけで政治を動かすことは不可能である。自分に都合の悪い話題を無視しはじめたアウン・サン・スー・チー氏は、ある意味で本物の政治家に成長したともいえる。

 日本とミャンマーの関係は非常に微妙だ。ミャンマーは太平洋戦争中も、欧米に対する牽制球として戦略的に日本を支持してきた国であり、軍事政権内部には日本との関係を重視する人物が多い(単純に親日というわけではない)。アウン・サン・スー・チー氏を中心にした欧米主導の経済開放路線であるにも関わらず日本企業が進出しやすいのはそのためだ。
 だが基本的にミャンマーの民主化は欧米主導であり、今後アウン・サン・スー・チー氏の権力が強くなることはあっても弱まることはないだろう。

 ミャンマーの民主化がさらに進展し軍事政権の存続基盤を揺るがす事態になった場合、日本は微妙な舵取りが求められるようになる。少なくともアウン・サン・スー・チー氏をピュアな平和運動家として認識していればよいという時代は終わったといえるだろう。

 - 政治

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