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日銀が日本の金利上昇リスクについてトーンダウン。アベノミクスへの遠慮か?

 

 日本が抱える金利上昇リスクについて、日銀がスタンスを軟化させている。黒田新総裁による政策転換を受けて事務方が遠慮したのか、それとも他に何か理由があるのか、その真意をめぐって市場では様々な噂が流れている。

 日銀は年2回、金融システムレポートを発表している。これは日本の金融システムが抱えるリスクや課題を抽出し、金融システム全体の状況について分析するためのものである。
 日銀は4月17日、最新版のレポートを発表したが、前回までのレポートで強調していた日本の金利上昇リスクについての記述をトーンダウンさせている。

 レポートでは、金利が1%上昇した場合に日本の金融機関が抱える損失は大手行が3.2兆円、地域行が3.4兆円の計6.6兆円と試算。これについて「大手行の自己資本基盤は、金利が大きく上昇しても大きく損なわれることはない」としている。

 基本的に過去のレポートでも、金利上昇によって金融機関の自己資本が大きく損なわれることはないという結論は同じである。ただ前回のレポート(2012年10月)では「国内金利が想定を超えて大きく上昇する場合、銀行の自己資本は相応に減少する」と、想定外の金利上昇リスクについて記載していた。
 さらにその前のレポート(2012年4月)では「相対的に自己資本基盤が弱い銀行では、自己資本比率が先行きも低い水準にとどまる可能性がある」として体力の弱い地域行のリスクを指摘していたほか、「財政の先行きに対する信認が低下すると、市場金利が非連続的に大きく上昇し得る点には注意が必要である」として、突如金利が上昇する可能性もあることを示唆していた。

 だが今回の最新レポートではこれらの記述が消えており、金利の上昇は実体経済など様々な経路を通じて銀行の経営に影響を及ぼす可能性を指摘するにとどまった。

 ここ1年で大手行は貸し出しを伸ばしてきており、自己資本も強化されてきている。1年前よりも経営体力が増加しているのは間違いない。
 ただ地銀や信金の状況は改善されていないほか、金利上昇で被る損失の絶対額もほぼ横ばいに推移している。金利上昇リスクが著しく後退したと言い切れる状態にはない。むしろ異次元の緩和策によって金利が低く誘導され、将来の金利上昇リスクを高めているともいえる。

 少なくとも、以前の日銀であれば、金利上昇リスクが低下したとは認識しなかったであろう。だが事務方はともかく、白川路線を支持していた審議委員の多くは前言を撤回し、一気に黒田路線に転向している(本誌記事「黒田新体制で役回りが激変した日銀の木内審議委員。孤高の慎重論を貫けるか?」参照)。今の雰囲気では事務方が折れるのも時間の問題かもしれない。

 今回のレポートは、世論の支持を集めつつあるアベノミクスに遠慮して事務方が折れた結果なのか、それとも、アベノミクスはやはり正しく、事務方が過去の分析の過ちを認めた結果なのか、その答えは案外早く分かるかもしれない。

 - 経済

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