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米国がシンガポールに最新鋭艦を配備。その地政学的意味とは?

 

 米海軍は4月18日、最新鋭の沿岸海域戦闘艦(LCS)「フリーダム」をシンガポール・チャンギ海軍基地に配備した。8カ月間のローテーション配置を予定しており、将来的には全4隻態勢となる予定。

 LCSは米海軍が大量配備を進めている小型の水上戦闘艦。高度なコンピュータ・システムを搭載しており、電子兵器や無人兵器などを駆使し、沿岸での軍事活動に従事する。
 大型の航空母艦を中心にした従来型の海軍兵力の概念を180度転換させる画期的な装備といわれている。

  米国がシンガポールに同艦を配備したのは、もちろん中国に対する牽制球のため。
 シンガポールはマラッカ海峡の出入り口に位置しており、中東とアジアを結ぶ交通の要衝となっている。中国は経済成長に伴って世界最大の石油輸入国になりつつあり、中東からの石油に大きく依存している。米国は機動力のある小型艦船をこの海域に集中配備することで、中国がこの海域で制海権を確保することを防ぐ戦略である。

 この動きは地政学的には、アジア太平洋地域の重要拠点が、東から西に動いていることを示している。冷戦時代は朝鮮半島がアジアの火薬庫であり、日本は旧ソ連から西側諸国を守るための盾であった。日本国内に米国最強の海軍兵力(第七艦隊)を配備し、沖縄に大量の海兵隊を常駐させていたのはこのような理由からである。

 だが旧ソ連が崩壊し、米国にとっての脅威は中国に変わった。だが旧ソ連と異なり、中国と米国は全面戦争するつもりはまったくない。中国が主張する海洋権益に対してどれだけ米国が牽制することができるかという局地的ゲームになる。
 そのための重要拠点がシンガポールというわけである。シンガポールはかつての日本のような存在になりつつあり、米国は今後、ますます南シナ海近辺に対するプレゼンスを強化していくことになるだろう。それにともなって、横須賀や佐世保、沖縄などに置かれている米軍基地の役割は年々低下してくることが予想される(本誌記事「オバマ大統領とリー・シェンロン首相の会談で見えてくる米軍の南シナ海へのシフト」参照)。

 かつて日本は保守と革新のイデオロギー対立から、米軍基地の存在をめぐって国論を二分させてきた。現在も米軍基地に関しては感情的な対立も多い。だが地政学的な観点では、日本における米軍基地の存在感はどんどん薄れているというのが現実なのである。好むと好まざるとに関わらず、日本から多くの米軍基地が姿を消す日が近づいているのかもしれない。

 - 政治

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