ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

最低賃金の導入に揺れるドイツ。最低賃金制度は経済成長の阻害要因なのか?

 

 最低賃金の導入をめぐってドイツが揺れている。ドイツは一部の職種を除いて最低賃金が導入されていない。最近では格差の問題が政治課題に浮上してきており、秋の連邦議会選挙を控え連立与党内部でも意見の対立が目立っている。
 メルケル首相は、最低賃金導入に理解を示しているが、一方で日刊紙とのインタビューでは、高い最低賃金が経済成長を阻害したり失業率を増大させる可能性にも言及している。

 確かに最低賃金が導入されていないドイツや北欧の失業率は総じて低く、経済成長率は高い。
 2013年2月時点での失業率は、ドイツが5.4%、フィンランドが8.1%、デンマークは7.4%となっている。これに対して最低賃金のあるフランスの失業率は10.8%、スペインは26.3%、ポルトガルは17.5%となっている。

 ただ、必ずしも最低賃金が存在している国の失業率が高いとはいえない部分もある。英国やオランダはドイツや北欧と同様、自由競争主義の国と見られがちだが、最低賃金制度がある。英国の失業率は7.7%、オランダの失業率は6.2%と低い(本誌記事「あまりにも醜い欧州の若年層失業率」参照)。

 またドイツや北欧では法律で定められた最低賃金制度は存在しないが、業種別に定められた労働協約によって実質的に最低賃金が保障されている面もある。意外だがイタリアにも最低賃金は存在せず、ドイツと同様、労働協約が同等の機能を果たしている。だがご存じの通りイタリアの失業率は11.6%と高く、経済は低迷している。
 経済学的にも、最低賃金の存在が経済成長率にどのような影響を与えるのか、またそれによって失業率がどのように変化するのかなど、詳しいことは分かっていない。
 もっともドイツの実質労働コストはフランスやイタリアの半分以下といわれており、雇用制度全般における柔軟な姿勢が価格競争力の源泉になっていることは明らかである。

 日本でも産業競争力会議において、解雇要件の緩和などが議論され始めているほか、65歳までの再雇用義務付けなど、雇用制度をめぐる動きが活発になっている。雇用制度に関する議論は、単に失業率の問題にとどまらず、世代間格差の問題や移民問題など多くの複雑なテーマを内包している。

 日本はデフレによる不況を言い訳に、多くの問題を先送りしてきた。アベノミクスが効果を見せ始めている今、そろそろ雇用制度に関しても包括的な議論を始める時期に差し掛かっている。

 - 政治, 経済

  関連記事

j31
中国が軍需企業の上場コングロマリット化を計画。中核5社の素顔とは

 中国が軍の近代化を急ピッチで進めている。今月1日、中国は次世代ステルス戦闘機「 …

no image
イタリアで地震予知の専門家に実刑というトンデモ判決。だがこれは別の見方もできる

 イタリアで22日、大地震の予知ができなかったとして、同国の地震予知の専門家ら7 …

fbikomi
トランプ大統領がFBI長官を電撃解任。第2のウォーターゲート事件との声も

 トランプ米大統領は米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を電撃的に解任した。トラン …

chongchongan
北朝鮮の貨物船がパナマ運河で強制停泊。積荷はミサイル部品の可能性大

 パナマ政府は7月15日、キューバを出航しパナマ運河を通過しようとした北朝鮮籍の …

abetoben
成長戦略の内容が徐々に明らかに。目新しさに欠け、市場が失望する可能性も

 政府が6月にまとめる成長戦略の内容が徐々に明らかになってきた。設備投資の促進、 …

tosho05
東証が審査を厳格化。なかなか前に進まない日本企業の情報開示

 スマホ向けゲーム開発企業「gumi」のずさんな情報開示をきっかけに、上場企業の …

merukeru03
ドイツの輸出超過に批判の声が高まる。だがこれはEUの自己矛盾を露呈しかねない

 好調な経済を背景に、欧州経済を支えてきたドイツに対して批判の声が高まっている。 …

trump201611b
トランプ政権における安全保障面での一部人事案が明らかに。対テロ強硬派が揃う

 トランプ政権の安全保障分野の陣容が徐々に見えてきた。トランプ氏はオバマ大統領を …

girishashusho
ギリシャ側が完全敗北。EUが主張する構造改革案をほぼ100%受け入れへ

 ギリシャの金融支援をめぐり、ギリシャ側が提出していた構造改革案についてEU(欧 …

no image
元外交官の佐藤優氏がはからずも明らかにした外務官僚の驚くべき怠慢

 野田首相が突然解散を決定したことで、日本外交に混乱が生じている。  日本とロシ …