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ツイッター偽情報による株価の乱高下。即座に株価が安定したことの方に意味がある

 

 4月23日のニューヨーク株式市場において、ツイッターの偽情報によって株価が一時暴落する騒ぎがあった。
 同日の13時07分、AP通信が保有するツイッターのアカウントがハッキングされ「ホワイトハウスで爆発が2回あり、オバマ大統領が負傷した」という偽情報が流され、株価が一気に下落した。情報が偽であることがすぐに判明したため、株価はすぐに正常に戻ったが、数分間の間に140ドルも下落していた。

 このような急激な株価の変動の背景には、アルゴリズム取引と呼ばれるコンピュータを使った自動売買システムが大きく影響している。
 近年アルゴリズム取引は急激に発達してきており、証券会社のディーリングの多くは自動取引に移行している。ネット証券各社は、個人顧客に対してもアルゴリズム取引用のサービスを提供しており、個人投資家の中にも普及しつつある。

 アルゴリズム取引は、株価の動きやニュースなどをコンピュータが瞬時に判断し、即座に注文を出す仕組みになっている。このため、大きな出来事があると皆が一斉に注文を出し相場が急変動することがある。今回はまさにその典型例といってよい。
 今回の株価下落の背景にアルゴリズム取引が存在していることや、きっかけがツイッターの偽情報だったことから、多くのマスコミは、ITに依存した取引の危うさという視点で報道を行った。
 だが市場関係者からは別の反応も聞こえてくる。今回は株価の急落よりも、その後すぐに偽情報であることをコンピュータが理解し、即座に株価が元に戻ったことに意味があるという。

 ITの分野では近年、自然言語解析の技術が目覚ましい勢いで発達している。高度なアルゴリズム取引のシステムでは、あらゆるソーシャルメディアの情報を収集し、人々がどのようなニュアンスでニュースを捉えているのかについてもシステムが瞬時に理解できるようになってきている。グーグルやヤフーなどIT各社も自然言語関係の技術を相次いで買収している(本誌記事「マスコミの記者も失業?グーグルやヤフーがニュース要約技術などを次々に買収」参照)。

 今回のケースでは、ツイッターに偽情報が現れたのが13時07分。株価はすぐに下落を始めたが、APの社員がこれに気付き、再びツイッターで「先ほどの情報はウソ。我々はハッキングされた」と表明したのが13時10分だった。その後AP通信が正式に情報が偽物である旨をツイートしたのが13時13分で、この時点ですでに株価は反転を開始している。ホワイトハウスがコメントを行ったのは13時16分で、13時19分の段階では下落前のほぼ8割まで回復していた。
 市場にパニックが起こらなかったのは、AP通信とホワイトハウスの迅速な対応によるところが大きいが、アルゴリズム取引もそれを完全にカバーしている。

 近い将来は、システムが偽情報である可能性を考慮に入れ、さらに高度に売買を判断するアルゴリズムも登場してくるだろう。技術の進歩は想像以上に早い。
 技術の進歩がもたらす弊害について人間が議論する前に、それを改善する新しい技術が登場してくる時代になったのである。

 - 経済, IT・科学

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