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税金を支払いさえすればOKという、脱税に対するドイツの考え方は正しいか?

 

 脱税には比較的寛容といわれてきたドイツで、脱税者の処罰をめぐって激論が戦わされている。
 4月3日、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、租税回避地における、大物政治家や富豪などの資産隠しの実態の一部を公表した。調査ファイルには250万ものデータがあるとされており、特にドイツの有力者の名前があるのではないかと話題になっていた(本誌記事「ジャーナリスト連合による衝撃の世界脱税者リスト。最終的な爆心地はEUの盟主ドイツ?」参照)。

  そんな中、とうとうドイツ著名人の脱税が発覚した。サッカーのドイツ1部リーグ、バイエルン・ミュンヘンのヘーネス会長が、スイスの口座を使った脱税容疑で逮捕されていたと現地マスコミが報じたのだ。会長はすぐに保釈金500万ユーロ(約6億5000万円)を払い逮捕状が取り下げられたという。

 ドイツには脱税を自己申告して税金を支払えば罪に問われないというルールがある。またドイツはスイスと協定を結んでおり、スイスの銀行が脱税者の口座から本人に代わって税金をドイツに納付すれば、脱税者は訴追されないようになっている。

 基本的にドイツの徴税に対する考え方は「税金を納めさせること」であり、その目的に沿って合理的にルールが決められている。つまり納税の義務を果たさなかった人に懲罰を与えることよりも、正しく税金を納めさせることの方が重要と考えているのだ。スイスとの協定や自己申告で訴追免除する制度などは基本的にこの考え方に基づいている。

 確かに自己申告すれば訴追されないということであれば、疑いがかかった人はすべての脱税を正直に申告する可能性が高い。一方、ちょっとした脱税でも処罰されてしまうのであれば、脱税した資金は最後まで申告せず、有罪となっても隠した方が得という判断をする可能性がある。

 もちろんこの考え方には反対意見も多く、脱税が発覚した場合には、徴税よりも処罰を優先すべきであるという声も大きい。ドイツの税務当局は、一時期、スイスの銀行から盗み出された預金者リストを購入し、脱税捜査を強制的に進めようとした。だが盗難されたデータを使うことに対する批判も多く、結局リストの使用は断念した経緯がある。

 ドイツの脱税をめぐる議論は、国家は何を目的にルールを定め、そのルールに反した人に何を目的に刑罰を与えるのかという、根本的な問題を問いかけている。
 「悪いヤツは処罰するのは当たり前」と結論を急がず、民主国家における刑罰はなぜ存在しているのかについて考えてみるのも悪くないだろう。

 - 政治, 社会, 経済

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