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大連立構想は国力衰退の象徴?ギリギリで大連立を回避した日本はまだマトモかもしれない

 

 総選挙における自民党の大勝利で立ち消えになったが、民主党政権末期には大連立構想が何度も浮上した。大政翼賛会の発足となった戦前の例を見るまでもなく、大連立構想は国力衰退の象徴ともいえる現象だ。

 長引く不況と高い失業率に歯止めがかからない欧州においても、とうとう大連立を模索する動きが出始めた。もともと政局が不安定で連立が前提となっているイタリアに加えて、連立という概念からはほど遠かったフランスにおいても連立内閣を求める世論が高まっているのだ。

 フランスの日曜版新聞が実施したアンケートでは、フランス国民の実に78%が大連立を支持していることが明らかになった。

 これはフランスではかなり衝撃的な出来事といってよい。現在の第五共和制は、保守と革新の二大政党制となっているため、米国ほどではないにせよ、連立内閣という概念はほとんど存在しない。実際、フランスの政治家の中で大連立を具体的に考えている人はほとんどいないという。

 だがフランスは景気の低迷と高い失業率が続き、ドイツの差は広がるばかり。大連立を望むという今回のアンケート結果は、既成政党による政治に国民が大きな不信感を抱いていることを証明する結果となってしまった。

  国民の苛立ちを受けて政治家は対応に必死だが、その試みは空回りしている。フランス社会党のデジール第一書記はドイツ主導の緊縮策をめぐってメルケル首相の名前を出して批判、バルトロン国民議会議長もこれに同調した。だが事態を重く見たエロー首相が直ちにツイッターで釈明を行うというドタバタがあった。

 イタリアでは総選挙後、政局が大混乱したが、結局レッタ氏を首相とする左右大連立内閣を成立させることで何とか政治的空白を回避した。レッタ新内閣は緊縮一辺倒の政策について若干の軌道修正を行うことを明らかにしている(本誌記事「イタリア大統領がレッタ氏を首相に指名。欧州市場は安定に向かう可能性が高くなってきた」参照)。

 確かにドイツは好調な経済を背景に各国に苛烈な緊縮策を要求しているが、フランスやイタリアの経済的低迷は過剰な労働組合の保護や、がんじがらめの規制など、自らが招いた結果でもある。
 ドイツを名指しで批判したり、ましてや大連立内閣を成立させたところで、両国が抱える問題を根本的に解決できるわけではない。両国の経済問題は、政治的対立の存在が原因なのではなく、むしろ既得権益者の利益保護という観点において政治的対立が存在しなかったことに原因がある。

 日本も既得権益者の保護という意味では、これまで政治的対立が存在していなかったといってよい(欧州と同様、日本では既得権益者でない人は政治的パワーを持っていない)。だが、日本は大連立ではなく、異次元の金融緩和策という道を選択した。もし今後、インフレが進展する事態となれば、インフレ課税という形で高齢者から若年層への所得移転を伴うことになり、結果的に議会での議論を経ずに既得権益者の保護を一部撤廃することになるかもしれない(本誌記事「黒田新総裁は実はインフレ課税を狙っている?刺激的な英経済紙のコラムが話題に」参照)。

 副作用も多く危険がいっぱいのアベノミクスだが、イタリアやフランスと比較すれば、日本には少なくとも今の世代から身を削ろうという覚悟は存在するということになる。もちろんこれには、インフレが所得移転をもたらす可能性があるということを、安倍首相が認識していればの話だが。

 - 政治, 経済

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