ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

訪米した茂木経産相が電力会社主導の新しい原発安全対策組織の設立を表明

 

 連休中にアメリカを訪問した茂木経済産業大臣は5月3日、ワシントンでポネマン米エネルギー長官代行と会談し、日本に対して天然ガスの輸出解禁を急ぐよう要請した。また茂木氏は、米国のシンクタンクで講演し、脱原発政策を見直す方針であることをあたらめて強調。原発の安全性を検証する新しい組織の設立を検討していることを明らかにした。

  日本は原発事故以降、石油の輸入が急増し、発電コストの上昇に悩まされている。米国は安価なシェールガスの開発を進めており、日本がこれを輸入することができれば、エネルギー・コストを大幅に引き下げることができる。
 だが米国は原則としてFTA(自由貿易協定)締結国以外へのエネルギー輸出を認めていない。オバマ大統領は日本への天然ガス輸出に前向きな発言をしており、一部では輸出が始まっているが、まだ正式な認可は下りていない状態だ(本誌記事「米国が安価なシェールガスの日本輸出を解禁。だが長期的円安で効果は相殺か?」参照)。
 茂木氏からの要請を受けたポネマン氏は「日本にとって緊急課題であることを十分に理解している」と述べ、早期の認可に前向きな姿勢を示した。

 続いて茂木氏は米国の著名シンクタンクであるブルッキングス研究所で講演を行った。茂木氏はアベノミクスなど安倍政権の経済政策について説明を行ったのち、日本のエネルギー政策について触れた。
 この中で茂木氏は、「震災以後、日本はエネルギー需要の9割を輸入に頼っている」と指摘、「この状態は「持続不可能である」とし、原発ゼロ政策は維持不可能であるとの見方をあらためて示した。その上で茂木氏は原発の安全対策として、国の原子力規制委員会とは別に、電力会社が中心となった安全性に関する新組織の設立を検討していることを明らかにした。

 茂木氏が言及した組織は、米国でスリーマイル島原発事故をうけて原発運営会社などが設立した「原子力発電運転協会(INPO)」をモデルにしているといわれる。原発の推進側として安全性を検証する役割が期待されているという。

 日本では原発の推進側と規制側が同じ役所の管轄になっていたため、安全性対策が意味をなさなかったと言われている。新しく発足した原子力規制委員会はとりあえず原発規制側に立っているが、一方で産業界からの情報提供がなく、現実的な安全対策を立案する能力に欠けるとの指摘もある。新しい組織は、原子力産業側の組織なので、より具体的な安全対策を立案することが可能という理屈である。

 米国の場合、原子力の推進は核戦略と不可分であり、基本的に原子力政策は国策として国民の支持を得ている。原子力の推進を前提に、規制官庁と推進側の組織が並立していることは、それなりに意味があるだろう。実際、INPOのトップには、海軍の元太平洋軍司令官でトモダチ作戦を指揮したロバート・ウィラード氏が就任していることからも、その状況を伺い知ることができる。

 だが日本の場合、原子力政策と核戦略は表面上分離しており(核戦略は米国に依存しているため)、産業用途としての原子力政策は、国論を二分している。このような状態で、推進側の安全検証組織を設立したところで、根本的な問題解決にはならない可能性が高い。

 細かい既成事実の積み上げで、なし崩し的に事を進めるやり方はいずれ破綻する。日本のエネルギー政策をどうするのか、明確な政治決断が求められている。

 - 政治, 経済

  関連記事

trybol
スイスで経営者の高額報酬を制限する国民投票を実施。立役者の主張とは?

 企業幹部が受け取る高額報酬の制限をめぐってスイスで国民投票が実施される見込みと …

sangyoukyousouryoku
手詰まり感が出てきた新しい成長戦略。素案には抽象的なキーワードが並ぶ

 政府は2015年6月22日、産業競争力会議を開催し、今月末にまとめる成長戦略の …

no image
米国のネット通販に韓国からのアクセス制限がかかるワケ

 年末商戦真っ最中の米国において、韓国からのインターネット・アクセスが制限され、 …

zangyou
米国人は仕事中毒?休暇中もノートパソコンを叩く人が増加中

 米国では休暇先にパソコンを持ち込み、仕事をする人が増えているという。日本では残 …

runesasu003
ルネサス救済が正式決定。だが、早くもガバナンス不在の現実が露呈

 経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスは10日、第三者割当増資を実施し …

kishidaputin
一筋縄ではいかない日露交渉。プーチン大統領は意図的な遅刻で日本側を翻弄?

 岸田文雄外務大臣はロシアのプーチン大統領らとモスクワで会談し、今月に開催される …

chukounen
中高年は若者のことを考えているのか?いないのか?

 日本の政策のほとんどは中高年向けのものに偏っている。その際たるものは年金受給額 …

Observationisland
北朝鮮のミサイル発射予告。情報収集はどんな体制で行われているのか?

 北朝鮮がミサイル発射を予告していることを受けて、米軍や自衛隊では準備が進んでい …

setubitousi
1~3月期のGDP改定値は設備投資の増加で上方修正。今後のカギは為替

 内閣府は2015年6月8日、2015年1~3月期のGDP(国内総生産)改定値を …

no image
決着が付いていない中国の政権争い。誰と誰が揉めているの?

 中国の次期政権をめぐるゴタゴタはまだ解決していないようだ。  党総書記に内定し …