ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

オバマ大統領が2020年までに米国は天然ガスの純輸出国になるとの見通しを明らかに

 

 メキシコなど中米諸国を歴訪したオバマ米大統領は5月4日、コスタリカで開催された経済フォーラムに出席し、2020年までに米国が天然ガスの純輸出国になるとの見通しを明らかにした(写真)。
 米国は基本的にエネルギーの輸出に消極的だったが、安価なシェールガスの開発が進んできたことで、その方針を転換する可能性が高まっていた。

 米国は以前から主要な産油国の一つであったが、自国での石油消費量が多いことから中東からの輸入に依存する体質となっていた。だがここ数年でその状況が根本的に変わってきた。きかっけとなったのは安価なシェールガスの開発である。

 シェールガスは岩盤層に含まれる天然ガスのこと。岩盤層から天然ガスや石油が取れることは知られていたが、コストが高いことからこれまで放置されていた。だが近年、新しい採掘技術が相次いで開発されたことにより、シェールガスを安価にかつ大量採掘することが可能となってきたのだ。

 国際エネルギー機関(IEA)は昨年末「世界エネルギー見通し」を発表し、2035年までに米国はエネルギーを完全自給できるようになるとの予測を発表していた。
 米国内では豊富なエネルギーを自国の産業に優先して割り当てるべきか、積極的に輸出に振り向けるべきかなのかについて活発な議論が行われてきた。
 エネルギーの輸出が可能になれば、米国には莫大な貿易黒字が転がり込んでくることになり、米国の経常収支が劇的に改善する可能性が見えてくる。金融業界やエネルギー業界は石油の輸出に積極的なスタンスだ。一方、石油を利用する側の産業界は、余剰のエネルギーを国内産業に回せば、エネルギーコストを大幅に引き下げることができるとして、積極的輸出には反対していた。

 オバマ大統領は日本に対する天然ガス輸出を容認する発言を行っていたが、今回、中米諸国に対しても明確に輸出解禁を打ち出した。このことは、国内における合意形成がほぼ完了したことを示していると考えられる(本誌記事「米国が安価なシェールガスの日本輸出を解禁。だが長期的円安で効果は相殺か?」参照)。

 実際にエネルギーの大量輸出が始まれば、世界経済に大きな影響を及ぼすことになる。先にも触れたように米国の経常収支が劇的に改善する可能性があり、もしそうなれば1971年のニクソンショック以降、40年以上にわたって続いてきたドル安のトレンドが大転換することになるかもしれない。
 また米国が資源国になることは地政学的にも劇的な変化をもたらすだろう。これまで良くも悪くも、米国の外交政策の基軸となってきた中東政策が不要になる。1823年のモンロー宣言以来、200年近くの時を経て、ようやく理論的に「引きこもり政策」が可能になる(本誌記事「米国がエネルギーの完全自給が可能に。世界的な安全保障の枠組みに変化の可能性」参照)。

 中東から軍事力を撤退させ、アジアにシフトするいわゆる「リバランス戦略」も、背後にはこうしたエネルギー受給の見通しの変化がある。世界秩序の再構築が静かに動き始めている。

 - 政治, 経済

  関連記事

tokei
通貨高でもスイスの時計輸出は絶好調。かつての日本もそうだった

 スイスの2014年における時計輸出額が過去最高を記録した。スイスの中央銀行は2 …

nomikai
「飲みニケーション」に関する単純な是非論は、問題の本質を見誤らせる

 一時は姿を消していたと思われていた飲みニケーションという言葉が再び注目を集めて …

trump201611
トランプ大統領の登場で懸念される、日露急接近による地政学的リスク

 混乱の中で投票日を迎えた米大統領選挙は、土壇場でトランプ氏が逆転勝利するという …

kabuka
アベノミクスによる株高はいつまで続くのか?もしバブルだというならこんなレベルじゃない

 アベノミクスによる株高に証券市場は沸いている。経済誌などでは「本格的な上昇相場 …

00008
フランスのマスゴミがGoogleから75億円をゲット。だがまだまだ嫌がらせは続く

 米Googleが新聞社のコンテンツをタダ乗りしているとして、検索結果の表示に課 …

tanakashuonrai
北朝鮮特使との会談でも実施された、相手を翻弄させる中国の外交テクニック。

 北朝鮮の金正恩第1書記の特使として中国を訪問した朝鮮人民軍総政治局長の崔竜海氏 …

urumuchi
中国メディアの報道から垣間見える新疆ウイグル自治区の治安維持の現状

 中国の新疆ウイグル自治区は、人口の大半がイスラム教徒のウイグル族で占められてお …

nouchi
コメ農家の平均的な農業収入はわずか年50万円。減反廃止以前に農業は崩壊している

 政府与党は11月25日、コメの生産調整(いわゆる減反)の見直しを柱とする農政改 …

setubitousi
11月の機械受注統計。内需経済の象徴である小売業で増加傾向

 内閣府は2014年1月16日、2013年11月の機械受注統計を発表した。主要指 …

nichia
従業員の発明による特許も基本的には企業帰属へ。職務発明制度の見直しがスタート

 政府は、企業の従業員が仕事で発明した「職務発明」の特許について、その権利を従業 …