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日本の成長戦略はどう進めるべきなのか?フランスの失敗から学ぶことは多い

 

 経済活動に対して政府が強く関与するなど日本との共通点が多いフランスの経済政策が転機を迎えようとしている。
 失業率の悪化に歯止めがかからず、支持率の低迷に悩むオランド政権は、EUが求める緊縮財政の方針を微妙に修正し、10年間という長期にわたる景気対策の取りまとめに入った。だが財政難から十分な財源を確保できず、政府が保有する主要企業の株式を放出するという、いわゆる「埋蔵金」の活用を模索し始めた。

  フランスは日本と同様、資本主義の国でありながら社会主義的な経済政策を採用している。
 国内の主要企業の多くは政府が株式を多数保有しており、企業トップも官僚出身者が多い。労働組合が手厚く保護され、正規雇用の労働者は簡単に解雇することはできない。社会風土も徹底的な学歴主義となっており、日本と同様、多くの規制が存在し、それに付随した国家資格が山のようにある。

 だがリーマンショック後の経済危機では、フランスの政策はすべて裏目に出た。ドイツの約2倍という高い労働コストを嫌い、多くの製造業が国外に流出してしまった。工場閉鎖を決定した企業には、大臣が直接抗議するというヒステリックな政治状況は、企業の海外流出にさらに拍車をかけている。
 政府は官僚主導で企業のイノベーションを活発化させ、国際競争力を復活させようとしているが、規制環境に安住した既存企業の動きは鈍い。

 一方ドイツでは、最低賃金を設定せず、雇用を流動化させることで労働コストを抑える政策が効果を上げている。ドイツの労働者の報酬は低いが、失業率は5.4%とフランスの半分の水準だ。また徹底的な競争政策を導入しており、競争力のない企業は容赦なく倒産させている。企業の廃業率は米国よりも高い。多くの弊害をもたらしているが、移民受け入れにも積極的だ。

 欧州ではドイツを中心とした構造改革、緊縮財政を中心とした経済政策と、フランスを中心とした財政出動型の経済政策の綱引きとなっている。現在は経済が好調なドイツの発言力が強く、EUは基本的に緊縮財政路線で統一されている。

 フランスは政治的状況がそれを許さず、緊縮策の緩和を強く望んでいる。今回の長期経済対策もその延長線上にあるが、財源を「埋蔵金」に求めるのはある種の矛盾といえる。オール・フランスで対策に取り組むことができるのは、政府が経済活動に強く関与しているからであり、その源泉は政府による株式の保有だからだ。

 日本のアベノミクスは、経産省が主導する政府関与型プランと、産業競争力会議の一部メンバー(竹中平蔵氏など)が主導する構造改革プランがごちゃまぜの状態となっている。現在のところ、日本の経済政策(特に産業政策)がどの方向に向かおうとしているのか、まったく方向性が見えない状況だ。
 持続的な経済成長を実現するためには、金融政策だけでは不十分なことは明白である。安倍政権はそろそろ、産業政策をどの方向性に定めるのか、ハッキリと明示すべき時期に来ている。

 国家主導型の代表格であったフランス経済が低迷していることは、現代においては、政府が関与するにしても、よほどの強権発動を行わない限りその効果は限定的であることを示唆している。ドイツ、米国、英国のような競争主義を中心にするのか、フランスのような国家主導型にするのか、いずれにしても、相応の覚悟が必要なことだけは確かなようである。

 - 政治, 経済

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