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データ改ざんの噂が絶えない中国の貿易統計。実際に数値を検証してみた

 

 中国の税関当局は5月8日、4月の貿易統計の数値を発表した。それによると、輸出額は前年同期比14.7%増の1870億ドル(約18兆5130億円)、輸入額は前年同期比16.8%贈の1689億ドル(約16兆7200億円)となり、貿易黒字は181億ドル(約1兆7900億円)となった。輸出、輸入ともに伸びが大幅に拡大し、中国経済が回復軌道に乗り始めていること示唆する内容となった。

 1月から4月までの累計値でも輸出額は前年同期比で17.4%の増加となった。地域別では、中国最大の輸出先である欧州向けが前年比マイナス0.9%と低迷し、逆に米国向けの輸出は9%増となった。日本向けはマイナス3%となっている。好調な米国向けの輸出が他のマイナスをカバーしている状況がうかがえる。

 一見好調に見える中国の輸出だが、実は中国の貿易統計には以前から改ざんの噂が絶えない。貿易統計には相手国が存在していることから、実は統計値のごまかしは発覚しやすい。
 実際に確認してみると、中国の貿易統計における日本向けの輸出額と日本の貿易統計における中国からの輸入額に大きなズレはなく、主要国の数値もほぼ同様の状況であった。では中国の貿易統計はどこが怪しいといわれているのだろうか?それは香港との貿易額である。

 香港はいうまでもなく、現在は中国政府の統治下にある。だが中国は一国二制度を採用しており貿易統計では香港は外国として扱われている。香港の各種経済データが示す貿易額と中国が発表する貿易額には2倍近くの開きがあるといわれる。確かに香港に対する輸出額は前年同期比で7割も増加しており、かなり異常だ。もし香港への輸出が現在の半分だと仮定すると、1から4月までの累計値では輸出額は10%以上も減ってしまう計算になる。

 中国と香港の人民元取引は自由化が進んでいるが、中国国内には依然として資本取引規制が多い。中国国内の企業が香港から資金を調達するため、架空の輸出取引を行い貿易額が水増しされているという。中国政府は輸出が好調であることを示すために、あえて架空の取引を黙認しているか、場合によっては積極的に数値を上乗せするよう指導している可能性もある。

 もし香港向けの輸出が水増しだとすると、輸出の伸びはせいぜい数%にとどまる可能性が高い。この数値であれば、他の主要国との整合性や中国のGDP値、製造業購買担当者指数などとも整合性が取れる(本誌記事「米中両国の製造業指数が示す、好調な個人消費と低調な製造業の綱引き」参照)。
 もっともGDPの数値についても電力消費量の推移との間に乖離が見られるなど、いくつかの指摘がなされている。ただ、GDPの数値を大幅に改ざんするのは現実的に難しく、変化率に限って言えば、それほど大きな改ざんはないと多くの市場関係者は考えている。

 ともかく、現状における中国の輸出や景気は緩やかなレベルでしか改善していない、というのが実態ではないだろうか?

 - 経済

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