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日本の経常収支。マスコミ報道では「黒字激減」だが、足元の状況は少し異なる

 

 財務省は5月10日、3月の国際収支を発表した。貿易収支は2194億円の赤字だが、円安の進展によって海外からの利子や配当が着実に増加しており、所得収支は1兆7111億円の黒字となった。最終的な国の儲けを示す経常収支は1兆2512億円の黒字となった。

 財務省では、3月の国際収支の発表と同時に、2012年度通期の国際収支も発表する。多くのマスコミはこちらの数字をメインに報道してしまうため、新聞や雑誌には「経常黒字が激減」といった見出しが並ぶことになる。

 だが2012年度の経常黒字が減少することはかなり前から分かっていたことであり、それほどのニュースバリューはない。むしろ、3月の数字に若干ではあるが、前向きな兆候が出ていることの方が重要である。

 日本は製造業の輸出競争力低下や原発停止によるエネルギー輸入の増加によって、基本的に貿易赤字体質の国なってきている。

 だが一方で日本は、これまでに蓄積した膨大な貿易黒字を海外に再投資しており、毎月1兆円以上の不労所得(利子・配当など)がある。この投資による利益(所得収支)が増加していけば、貿易赤字のインパクトを減らし、海外への富の流出を防ぐことができる。

 これまで所得収支は円高にもかかわらずほぼ一定レベルで推移してきた。それは日本からの投資金額も増加しているからである。
 従来は金融機関による米国債への投資がほとんどであったが、最近は工場の海外移転に伴って現地法人を設立し、そこへの出資という形で海外投資が行われている。現地法人で生産すれば国内の工場はなくなってしまうが、現地法人からの利子や配当は増加することになる。今後円安がさらに進展していけば、所得収支もそれにともなって増えてくるだろう。

 工場を海外に移転したり海外企業を買収し、そこへの投資から得られる配当で稼ぐというやり方は、成熟国家となった日本が今後目指すべきモデルといってよいだろう。トヨタはすでに為替に関係なく利益を上げる構造ができあがっており、日本に巨額の所得収支をもたらしている(本誌記事「トヨタの好決算は円安の影響ではない。海外生産、海外販売へのシフトが利益の源泉」参照)。

 海外への直接投資は今年に入って減少していたが、3月は1.7兆円と大幅に増加した。中国向けと米国向けが増えたことが主な要因であり、今後もこの傾向が続く事が望ましい。

 アベノミクスによる円安が日本経済にメリットをもたらすのだとすると、それは輸出の増加ではなく、配当の増加であるべきなのだ。グローバル化という厳しい道のりを放棄し、安易に円安による輸出増加だけを望めばインフレという大きなしっぺ返しをくらうことになるだろう。

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