中国の前国家エネルギー局長の汚職事件。江沢民グループの影響力排除が目的か?
新華社通信や中国中央電視台など中国の国営メディアは、中国共産党中央規律検査委員会が国家発展改革委員会の劉鉄男副主任について、重大な規律違反の疑いで調査を行っていると報じている。
劉氏については、中国の有力経済誌「財経」の羅副編集長が、学歴を詐称しているほか特定企業と不透明な関係にあるとインターネットに告発していた。羅氏の告発に対し、当時、劉氏が局長を務めていた国家エネルギー局は、「誹謗中傷である」として警察に通報していたが、羅氏はこれにひるまず、再度ネット上で告発を行っていた。
劉氏は、国家発展改革委員会の一般職員から幹部まで上り詰めたたたき上げで、江沢民グループに所属するといわれている。1996年から99年間まで、在日本中国大使館で経済部参事官を務めていた経験もある。
中国では特権階級の汚職について国民の批判が高まっている。習近平国家主席は、綱紀粛正に力を入れると明言しており、今回の措置はそれを受けたものとみられる。
だが幹部に対する汚職摘発の強化は諸刃の剣でもある。そもそも中国政府や共産党の幹部が汚職に手を染めることができるのは、共産党が独裁的に中国を支配しているからであり、腐敗幹部の摘発強化は、最終的には共産党支配体制への批判につながりかねない。
また中国では司法やジャーナリズムの独立はまったく保証されていない。したがって、汚職の摘発も、敵対派閥をつぶすための権謀術数として実施されることも多い。
昨年、中国共産党の党大会を前に失脚した薄熙来氏や、汚職で摘発された劉志軍前鉄道部長のケースは、いずれも胡錦濤前国家主席をリーダーとする派閥と、習近平現国家主席および江沢民元国家主席の派閥における権力闘争の結果である。
現在、規律違反の疑いで調査を行っている中国共産党中央規律検査委員会の書記は王岐山氏だが、同氏は習近平氏と同じ太子党(共産党幹部の二世、三世を中心とした派閥)に属している。習氏は太子党であると同時に江沢民グループにも近いといわれているが、王氏は江沢民グループからは距離のある人物といわれる。
劉副主任が局長を務めていたエネルギー局は、解体された鉄道部と並んで江氏の影響力が強いといわれていた役所である。今回、江氏の子飼いであった劉副主任が調査の対象となったことで、現政権における江沢民グループの影響力がさらに低下すると見られている。
江氏は習氏が共産党総書記や国家主席に就任する際には後ろ盾になった人物だが、権力を握った習氏にとっては江氏が多大な影響力を残すことはあまり望んでいない。李克強首相が属する胡錦濤グループと習氏は対立しているが、江氏の影響力排除という意味では、利害が一致した可能性もある。
関連記事
-
-
国際原子力機関(IAEA)が福島の廃炉作業を視察。政府とIAEA側の狙いとは?
国際原子力機関(IAEA)の調査団は4月22日、約1週間にわたる東京電力福島第 …
-
-
預金封鎖と財産税が密かな話題となっている背景とは?
終戦直後に実施された預金封鎖と財産税がちょっとした話題になっている。NHKが夜 …
-
-
テナントがいない?のに都市部で次々と新築ビルが建設されるのはナゼ?
東京都心など、利便性の高い地域を中心に不動産の建設ラッシュが続いている。一部で …
-
-
一連の朝日新聞批判。日本人はやっぱり大手マスコミが大好き
朝日新聞社の木村伊量社長は2014年9月11日、記者会見を行い、東京電力福島第 …
-
-
高速道路無料化は永久に無理?高速3社が老朽化対策に10兆円必要との試算
高速道路3社(東日本、中日本、西日本)は4月25日、高速道路の老朽化対策に関す …
-
-
軍部が全権掌握するタイで、フェイスブックが一時利用不能に
軍部がクーデターで全権を掌握したタイでは2014年5月28日、SNSのフェイス …
-
-
欧米の経済制裁で疲弊が進むロシア経済。落とし所の探り合いが続く
ロシアに対する経済制裁がロシア経済をじわじわと追い込んでいる。ロシア経済の要で …
-
-
ハチャメチャ田中文科相が期せずしてあぶり出した、腐敗した教育行政の闇
田中真紀子文部科学相が、新設を申請していた3大学について突如不認可としたことで …
-
-
「呪われた法案」との声も。心機一転、再提出した派遣法改正案が再び先送り?
今国会の目玉法案のひとつで、派遣労働者の受け入れ期間の上限を撤廃する労働者派遣 …
-
-
黒田日銀総裁候補が衆院で所信。滑り出しとしては満点に近いか?
日銀総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行総裁は3月4日、衆院議院運営委員会での所信 …