ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

米経済誌が在日米軍の段階的撤退論を掲載。内容は冷静で、かなり客観的

 

 米経済誌ウォール・ストリート・ジャーナルは5月10日、「米軍は日本からの撤退を検討すべき時期にきている」という論文を掲載した。論文を執筆したのは、米バード大学教授でジャーナリストのイアン・ブルマ氏。日本や中国に造詣が深く、日本の雑誌にもたびたび寄稿している人物である。

 論文でブルマ氏は、革命世代が第一線から退いた中国は以前の中国とは異なると指摘。功罪含めて日本を受け止める余裕はなくなっているとしている。一方日本も、岸信介氏の孫である安倍氏が首相に就任するなど右傾化が進展していると分析している。

 その上で、これまで米国の同盟国として、米国のアジア戦略の要となっていた日本の役割は変わりつつあり、米国は段階的な日本からの撤退を検討すべき時期に来ていると結んでいる(写真は横須賀を母校とする原子力空母ジョージワシントン)。

 ブルマ氏の主張に対してはいろいろな意見があろうが、米国から見た日本の客観的な状況をよく表していることは間違いない。
 確かに毛沢東氏には、日中国交回復交渉の際、日本は戦争賠償をしない代わりにODA(政府開発援助)という日本企業の利益になる形で経済援助するという妥協案を受け入れるだけの度量があった。下手をすれば中国国内で日本に弱腰という批判が出る可能性もあったが、対ソ戦略や米国に対する牽制球という現実主義者としての、また文化大革命という大虐殺をやりきった恐ろしい権力者としての、毛氏の政治決断が優先したのである。

 日本も同様である。田中角栄氏が主導した日中国交回復については、その後、自民党の利権と化したODAのあり方などをめぐって賛否両論はあろうが、当時としてはベストな現実的決断だったと考えられる。だが現在の日中両国にはこうした清濁を併せ呑む度量は確かに欠けているかもしれない。

 一方米国の世論も近年大きく変化している。あまり表面化はしていないが、日本からの撤退論はすでに以前から議論され始めており、ブルマ氏の主張はそろそろタイミングが熟してきているということなのだろう。

 米国は世界の警察官としてグローバルに軍事力を行使することについて国内世論が懐疑的になってきている。日本については、ブッシュ政権時代から、再軍備を促し米国の強固な同盟国として軍事的に独立させるプランと、中国の覇権をある程度容認し、日本の役割は低下させるプランとが併存してきた。
 いずれによせ米国の日本における軍事的なコミットメントは低下させる方針であることに変わりはなく、沖縄から海兵隊を撤退させ、グアムやオーストラリアに再配置しているのは、この考え方の延長線上にある。

 近視眼的には日米同盟をバックに中国の干渉に対して牽制するという方法はある程度功を奏するかもしれないが、長期的にはその戦略は成立しない可能性がある。最終的には米国次第であり、日本には選択肢がないという考え方もあるが、少なくとも米国に対して、日本の希望は主張することができる。米国もある程度は聞く耳を持つだろう。

 無意識的に日米同盟を所与の条件とする、従来の安全保障観が成立しなくなりつつあることだけは確かであり、日本人はそのことをはっきりと自覚すべき時期にきている。

 - 政治

  関連記事

sengyoshufu
日本女性の満足度は高いというOECDの調査結果。男女平等と幸福の関係は?

 安倍政権は成長戦略の一環として女性活用を大々的に掲げており、配偶者控除の見直し …

spain
スペインがわずか1600万円の不動産投資で外国人に永住権を付与

 スペイン政府は、銀行の不良債権問題の解決策のひとつとして、16万ユーロ(およそ …

wine02
貿易戦争?中国がEUの関税措置に対する報復として、欧州産ワインを標的に

 中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安く売られているという業界から …

rodman02
金正恩氏とバスケ観戦をしたロッドマン元選手の前にコカコーラが置いてあったワケ

 北朝鮮の金正恩第1書記は28日、平壌市内の体育館において、北朝鮮を訪問中の全米 …

no image
スノーデン氏は米国の不手際?で香港を出国。アイスランドではなくエクアドルに亡命?

 米国家安全保障局(NSA)による国民監視システム「PRISM」の存在を暴露し、 …

businessman04
労働者の賃金がさらに減少。賃上げ実施後もあまり期待できない理由とは?

 厚生労働省は2014年2月20日、2013年賃金構造基本統計調査の結果を発表し …

shakaibunkakaikan
社民党が党本部を移転。旧党本部ビルは幽霊屋敷と呼ばれ崩壊寸前だった

 社民党は26日、社会党時代から半世紀近く使用してきた永田町の「社会文化会館」か …

ohtahiroko
政府税調が法人減税改革案をまとめる。減税先行となり、優遇見直しは難航必至

 政府税制調査会は2014年6月27日、法人課税専門委員会(大田弘子座長)がまと …

no image
李明博大統領、政敵である朴槿恵氏と会談。退任後は逮捕されずに済むのか?

 韓国の李明博大統領と与党セヌリ党の次期大統領候補に指名された朴槿恵氏は2日、青 …

kidera
中国大使の木寺氏が着任。真紀子大臣に責められ病気になっちゃった人だけど大丈夫?

 丹羽中国大使の事実上の後任となる木寺昌人駐新中国大使が25日着任した。木寺氏は …