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女優アンジェリーナ・ジョリーが悩んだ、がん予防手術のリスクとベネフィット

 

 米国の著名女優アンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんの発症を未然に防ぐために乳腺切除手術を受けていたことを明らかにした。米国では遺伝子検査を受けることで、特定の病気の発症リスクを事前に調べ、予防手術を受ける人が増加しているが、著名人がそれを明らかにしたことから大きな話題となっている。

 ジョリーさんは、遺伝子検査によってBRCA1と呼ばれるがん抑制遺伝子に変異があることが判明した。
 ジョリーさんの乳がん発症リスクは87%、卵巣がん発症リスクは50%にもなるという。ジョリーさんの母親は56歳で亡くなっており、子供達のことを考えて切除手術を受けることにした。手術を受けたことでジョリーさんの乳がんリスクは5%にまで減少しているという。

 だがジョリーさんはこれで完全に安心できる状況になったわけではない。卵巣がんの発症リスクが残っているからである。
 卵巣の摘出手術は乳腺の手術に比べて複雑でリスクも高い。手術後に別な疾患を引き起こす可能性もあり、より慎重さを必要とする。ジョリーさんは今後、卵巣の摘出手術も考えているという。

 がんには個人差があるが、一般に乳がんと卵巣がんでは、卵巣がんの方が危険度が高い。
 卵巣がんは抗がん剤が効きやすいがんといわれるが、早期発見が極めて難しいという特徴がある。ステージ1で発見できれば5年生存率は90%を超えるが、多くはステージ3で発見される。ステージ3の5年生存率は31%、ステージ4の場合には12%しかない(国立がん研究センターの実績)。日本では卵巣がんに年間2万人程度が罹患するといわれる。

 一方乳がんは、ステージ4の生存率は卵巣がんと変わらないが、ステージ3の生存率は72%と比較的高い。しかも発見は卵巣がんよりも容易であることを考えると、共存が可能ながんといえる。日本では年間6万人の罹患者がいる。

  乳がんは卵巣がんの3倍の患者数だが、発見も容易で卵巣がんよりは生存確率が高い。一方、卵巣がんは乳がんよりも患者数が少ないが、発見が遅れると致命的だ。しかも切除する手術の負担は卵巣の方が重い。
 切除にあたっては、リスクとベネフィットでかなり悩ましい選択を迫られることになる。米国のメディアでは、乳がん予防に乳房の切除を行った1年後にステージ4の卵巣がんが発見されたという不幸な事例も紹介されている。

 いくら技術が発達して病気の発症をある程度予測できるようになったとしても、結局はリスクとベネフィットの兼ね合いで悩むことになる。病気の予防のために手術で臓器を切除してしまうことに対する是非も含めて、なかなか難しい問題といえる。

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