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日立が保守的な中期経営計画を発表。堅実だがやはりガラパゴスの印象は否めず

 

 日立製作所は5月16日、2016年3月期に売上高10兆円、当期純利益3500億円を目指すとした中期経営計画を発表した。電力や情報システムなどの社会インフラ分野を強化し、海外売上高比率を現在の40%から50%に増やす。

 巨額損失を計上する他の大手電機と比較して日立の経営は順調だが、それは日本型ガラパゴス経営の裏返しでもある。
 保守的な今回の経営計画の達成は比較的容易と考えられるが、それは積極的にリスクを取らず低収益に甘んじる日本企業の姿を象徴しているともいえる。

 日立の2013年3月の決算は、売上高が前年比6%減の9兆410億円、営業利益は2%増の4220億円だった。半導体不況を受けて製造装置の売上げが低迷したほか、中国の建設ラッシュの終了で建機部門の売上げも減少した。また前期に売却したハードディスク部門の売上げがなくなったことも減収要因となっている。製品の単価下落が進んだが、原価低減も同時に進めることで、営業利益は昨年と同水準を確保した。

 日立の事業ポートフォリオは幅広く分散しており、いい意味ではリスク分散になっているが、悪い意味では個別事業の寄せ集めでしかない。現在苦境に陥っている日本の電機業界の中で日立が唯一健全な経営を保っているのは、各事業の関連性が薄いからである。
 プラズマディスプレイに集中投資したパナソニックや液晶に事業分野を絞ったシャープが経営危機に陥っている状況とは正反対だ。

 だが選択と集中を行わないということは低収益の裏返しでもある。日立は連結売上高が9兆円と日本メーカーの中ではグローバルに通用する規模を持つ数少ない企業である(世界レベルでは10兆円規模がないと巨大企業とはみなされない。その意味でシャープやNECは中小企業といってよい)。だが米GEや独シーメンスといった競合メーカーと比較すると、その収益率はあまりにも低い。

 今回の中期経営計画では、グローバルな社会イノベーション事業を強化するとうたっている。中期計計画の資料にはカタカナ文字ばかりが並ぶが、要するに原発、鉄道、情報システムの海外販売を強化するという話である。現在全体の3割程度となっている関連事業の比率を4割まで高め、そのために海外要員を1.5倍に増やすという。

 だが残りの既存事業について大きな変化はなく、3年かけて、現在9兆円程度の売上げを10兆円に、1700億円程度の最終利益を3500億円まで引き上げるというレベルにとどまっている。3500億円の最終利益は2012年3月には実現していた数字であることを考えると、かなり保守的な数字である。
 これは資本市場でグローバルな評価を受けていない日立ならではといえる。もし日立が資本市場でグローバル企業と認識されているなら、この水準の計画では市場からノーを突きつけられてしまうだろう。実際、日本の数少ないグローバル企業であるソニーは、業績低迷を受けて米国の投資家から分社化の圧力を受けている。

 ガラパゴスを象徴でありながらも、相対的には良好な経営を続ける日立。雇用を守っている点では日本経済に貢献しているが、多くの富を日本にもたらしているわけではない。その評価はなんとも難しい。

 - 経済, IT・科学 ,

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