米ヤフーがSNS+ブログの新興企業タンブラーを買収。ただ両社の融合には疑問符も
米ヤフーは、ブログとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を手掛ける「Tumblr(タンブラー)」を買収する。買収金額は11億ドル(約11億2000万円)。昨年7月にマリッサ・メイヤー最高経営責任者(CEO)が就任して以来、ヤフーにとってはもっとも大規模な買収案件となる。
タンブラーはブログとソーシャルネットワーキング・サービスを融合させたサービスを提供するベンチャー企業。
若年層を中心に人気が拡大しており、1か月あたり1億人の利用者がいるという。また毎日12万人ずつ会員が増加し、1日に投稿されるブログや画像は500億点にものぼるといわれる。
現在ヤフー最大の課題はスマホ対応と高齢化対策。ヤフーはネットの世界では完全に老舗企業になってしまっており、利用者の高齢化が進んでいる。またスマホ経由のアクセスが少なく、今後の成長性に疑問符が付いている。タンブラーの利用者はほとんどが35歳以下でスマホからのアクセスも多い。ヤフーは同社の買収で事業構造の転換を図ろうとしている。
ただこの買収がうまくいくのか懐疑的な見方をする人は多い。同じネット企業で広告収入に依存するといっても、ヤフーのビジネスモデルはあくまで媒体であり、既存の雑誌ビジネスの延長といえる。これに対してタンブラーのサービスはSNSであり、利用者の属性もWeb上での行動様式も異なっている。タンブラーの買収で獲得したユーザーをヤフーにスムーズに展開できるのかは不透明だ。
またタンブラーの現在の売上げはわずか1300万ドルと少ない。2013年に入ってから収益化を急ピッチで進めているとはいえ、ヤフーの業績に対して、いつどれほどの貢献ができるのか今のところ見通しは立っていない。また若年層ほど広告に対する拒否感が強いといわれていることも、収益化の進展に疑問符が付く理由の一つとなっている。
ヤフーはタンブラーの買収を現金で実施する。同社は2013年3月時点で約30億ドルの現金(もしくはそれに類する換金性の高い金融商品)を保有しており、その3分の1を買収に費やすことになる。財務的にはまったく問題はないが、もし今回の買収に失敗すると、今後の大型買収案件には大きな影響を及ぼすことになるだろう。
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