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米国で進む製造業回帰。背景にあるのは新興国の労働コストとシェールガス革命

 

 米国で製造業への回帰が進んでいる。主役となっているのは重電や化学などいわゆる重厚長大産業。背景には中国をはじめとする新興国の人件費高騰と、米国のシェールガス革命がある。一度は製造業を捨てた米国が再びモノ作り大国に向けて舵を切り始めている。

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)社は2012年、中国に移管していた家庭用電気温水器の製造を再びケンタッキー州ルイビルの工場に戻す決断を行った。
 中国の労働コストが上昇しており、輸送コストを加味すると、以前ほど中国で生産するメリットがなくなってしまったことが主な原因。
 化学大手のダウ・ケミカルはリストラの一環で世界各地の工場を閉鎖する一方、テキサス州には40億ドルを投じて大規模な新工場を建設している。米国産の安価なシェールガスを原料に使いエチレンの米国生産を強化する。

 米国に工場を増設しているのは、米国企業だけではない。英ロールスロイス社はバージニア州に工場を設立し、2011年からジェットエンジンの部品製造を行っていたが、2012年11月には工場の規模を大幅に拡大させた。また独シーメンス社はノースカロライナ州にタービンの製造拠点を設立し、中東やメキシコへの出荷を行っている。トヨタ自動車もケンタッキー州の工場を増設し、高級車レクサスの現地生産を行う事を決定した(本誌記事「円安にもかかわらず自動車メーカーが相次いで国内生産を縮小。空洞化は最終段階へ」参照)。

 米国ではリーマンショック後、民間企業の設備投資が冷え込んでいたが、2011年にはようやくリーマンショック前の水準まで復活した。海外からの直接投資も増加しており、2012年には約1670億ドル(約17兆円)が米国企業にあらたに投資されている。欧州の景気低迷が続いていることから、製造業全般で冴えない展開が続いているが、米国内の設備投資は着実に増加してきている。

 為替市場ではドル高が進んでおり、米国に製造拠点を設けることは輸出に際して不利になる。だがそれでも米国内での製造を決断する企業が増えているのは、中国をはじめとする新興国の人件費が高騰しているからである。
 特に重電や化学といった重厚長大産業は多数の熟練工を必要としており、ミャンマーやベトナムといった地域にそう簡単に工場を移すことができない。米国は先進国にもかかわらず人口が増加しており、教育された労働者を大量に採用することができる。多くのメーカーが、総合的に見れば米国生産にメリットがあると考えるようになってきている。

 また少し意外なことだが、中東や南米地域では「Made in USA」には高品質というブランド・イメージがあり、販売戦略上有利に働くことも多いという。米国の自動車メーカーはコスト削減を狙って相次いでメキシコに工場を設立したが、最近では、Made in USAのブランドを求めてわざわざ米国産の自動車をメキシコに輸入する業者も増えてきている。

  米国で始まったシェールガス革命はこの動きをさらに加速させることになるだろう。米国は近い将来、世界最大の石油産出国に転じることが予想されている。余った石油は積極的に輸出する方針で固まりつつあるが、それでも石油は余剰気味となり、米国のエネルギー・コストは大幅に低下する可能性が高い。豊富な労働力と増加する需要、これに安価なエネルギー源が加われば、米国での製造を決断する企業はさらに増えてくるだろう。

  米国における製造業回帰の動きはすでに日本メーカーにも影響を与えている。住友化学や三井化学など化学大手は、国内工場の縮小に動き始めている。これまで日本の産業空洞化は電機など軽量な産業分野が中心であったが、今後は意外な分野でも空洞化が進展することになるかもしれない。

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