ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

日銀黒田総裁のホンネはどこに?市場にくすぶるインフレ許容論者説

 

 日銀は5月22日の金融政策決定会合で、景気判断を上方修正するとともに、前回決定した量的緩和策の継続を決定した。会合後に開いた記者会見では、金融政策決定会合の内容よりも、急上昇している長期金利に関して話題が集中した。

 黒田総裁は「ボラティリティが高くなっている点は十分に注視していく必要がある」とし、国債の急激な価格変動に対しては一定の懸念を示した。だが、長期金利の水準そのものについては「物価上昇や景気への期待に左右される面が大きい」として、中央銀行が完全にコントロールすることは難しいとの見解を示した。

 市場で価格が形成されているものについては、基本的に市場の価格決定にまかせるのが原理原則であり、急激な変動には対処するという黒田氏の発言は、非常に教科書的なものといえる。だが市場は日銀の強力なリーダーシップを過度に期待している面があり、今回の発言は長期金利の上昇を日銀が許容したと解釈される可能性もある。

 今後は国債の買い入れペースを調整し、弾力的な運用を行っていくとしたが、年間50兆円という金額には変更はないという。ただ、前回の金融政策決定会合の公表資料では、年間50兆円という金額に加えて月額7兆円という数字が盛り込まれていたが、今回の資料からはその記述が消えている。また前回の資料では物価安定の目標を「2年程度の期間を念頭に置いて」としていたが、今回の資料では具体的な記述は見当たらない。状況によっては、オペ期間を前倒しすることに含みを残した形となっている。

 ただ黒田氏が本音では相当な水準のインフレを許容しているのではないかとの噂は絶えない。英国の著名経済誌が黒田氏について「インフレ課税論者」であると評したこともある(本誌記事「黒田新総裁は実はインフレ課税を狙っている。刺激的な英経済誌のコラムが話題に」参照)。インフレ課税論者というのは極端としても、黒田氏にとってインフレを許容するメリットは少なくない。

 黒田氏が政府に対してコミットしているのは物価目標であって経済成長ではない。2%の物価上昇をコミットした以上、あらゆる手段を使って物価上昇を試みるかもしれない。また黒田氏は財務省出身であり、政府債務の圧縮については、強い意志を持っている可能性が高い。インフレによる実質的な債務圧縮以外に抜本的な解決方法はないと黒田氏が考えているのだとしたら、インフレの進行は必ずしも阻止しなければならない事態ということにはならない。

 日銀が金利の安定もしくは低下にどの程度真剣なのかは、今後の具体的なオペの内容で明らかになってくるだろう。もし具体的な買い入れペースや金額に大きな変化がなければ、市場では金利上昇が規定路線になってくる可能性が高い。

 - 経済 , ,

  関連記事

chikyugi
日本の1人あたりGDPが急降下。そろそろ貧しさが顕在化してくる?

 日本の1人あたりGDP(国内総生産)が大きく順位を落とし、OECD(経済協力開 …

merukeru03
ドイツの輸出超過に批判の声が高まる。だがこれはEUの自己矛盾を露呈しかねない

 好調な経済を背景に、欧州経済を支えてきたドイツに対して批判の声が高まっている。 …

contena03
日中韓FTA交渉がスタート。だが日本に続き韓国もTPP参加に傾いており状況は微妙

 日本、中国、韓国の3カ国は3月26日、韓国のソウルで自由貿易協定(FTA)締結 …

masuzoe03
オリンピック利権に好都合だった舛添氏の辞任で、日本経済の不確実性は高まった

 東京都の舛添要一知事は2016年6月15日、6月21日付けの辞職願を都議会に提 …

usakoyoutoukei201702
良好な米雇用統計で、3月利上げの確率がさらに高まる。資産縮小論の可能性も

 米労働省は2017年3月10日、2月の雇用統計を発表した。代表的な指標である非 …

infure
輸入インフレの足音が聞こえる。政府は必死に企業に賃上げを要請しているが・・・

 円安が進展する中、これまで続いてきたデフレ傾向が一部でプラス転換する傾向が見え …

taxi
タクシーの規制強化。それは本当に運転手の待遇改善を目的としているのか?

 与党と民主党は、タクシーの台数制限を義務づける「タクシーサービス向上法案」に合 …

imf201604
IMFが最新の世界経済見通しを発表。新興国経済の低迷が先進国にも波及

 IMF(国際通貨基金)は2016年4月12日、最新の世界経済見通しを発表した。 …

ecb201506
ドイツと米国の金利が急上昇。金利正常化プロセスなのか市場の混乱か?

 このところ各国の金利が急上昇している。4月中旬にはゼロ%まで近づいたドイツの長 …

sumitomochiba
国内化学各社が相次いでエチレン生産から撤退。米国シェールガス革命のインパクト

 住友化学は2月2日、石油化学製品の原料であるエチレンの国内生産を停止すると発表 …