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国際的課税逃れへの包囲網が強まる。だがグローバル企業への規制が難しい本当の理由

 

 国境を越えた税金逃れに対する包囲網が急速に整えられつつある。欧州連合(EU)は5月22日、ベルギーのブリュッセルで首脳会議を開き、加盟国の間で銀行口座に関する情報を交換することについて合意した。また主要8カ国首脳会議(G8サミット)は、6月に開催される次期会合において、国際的な課税逃れを防ぐ国際ルール作りに取り組む方針を明らかにしている。

 EUでは、租税回避地を使った隠し口座の活用などによって、域内で年間1兆ユーロ(約130兆円)に上る税収損失があるといわれている。欧州各国が厳しい緊縮策を求められる中、税金逃れへの対策を強化する声が日増しに高まっている。EUでは対策の第一歩として、加盟国間での銀行口座の情報交換を進めていきたい考えだ。

 ただ、オーストリアやルクセンブルグなど金融を主要産業としている国からは慎重な姿勢を求める声が上がっている。EUで銀行情報の透明化が図られるとスイスなどEU非加盟国の銀行の資金が集中する可能性があることがその理由。
 オーストリアとルクセンブルグ両国は、スイスとEUが交渉することを条件に合意を受け入れる方針だ。

 租税回避地を使った露骨な税金逃れとは若干状況が異なるが、グローバルに展開する大企業が、税率の低い国に利益を移し税負担を減らしていることに対しても監視を強化する。

 アップルやアマゾンといったグローバル企業は、グループが所有する無形資産をアイルランドなど税率の低い国に移管、本国から経費を支払う形にして全体の法人税を圧縮している。英国議会でスターバックスやグーグルの節税対策が問題視されたほか(本誌記事「英国でスタバ、Amazon、Googleの税金逃れが政治問題に。英国も劣化しているのか?」参照)、アップルのクックCEOは米国議会に呼ばれ税金の支払いについて証言を求められた。
 次回のG8ではこうしたグローバル企業の節税行為についてどのような対策が必要なのか議論する予定。今後は国際的なルール作りを進めていきたい考えだ。

 租税回避地を使った隠し口座は論外としても、企業の節税行為への対策については、現実的には難しいとの声が大きい。無形資産の評価方法や資産移転に関して何らかの制限を設けることは可能だが、抜本的な法人税の税率については各国にそれぞれの事情があり、それを一律に規制するのは難しいからだ。

 例えば株式の配当に対する課税ひとつとっても、各国の対応は様々だ。外国人投資家への配当にはほとんど税金をかけない英国に対して、フランスでは極めて高い税率を適用している。英国は外国からの投資を歓迎しているが、フランスはあまり外国人投資家には参加してほしくないと思っている。税制にはその国の外国に対する国民性が反映されるものであり、単純に有利不利の問題だけではないのだ。
 しかもやっかいなことに、配当に高い税率をかけていながら、一方でフランスは外国からの投資も望んでいる。租税に関する問題が発生する根本的な原因は、外国からのお金は欲しいが、外国からの干渉は望まず、税金はたくさん徴収したいという、各国政府のエゴにある。

 一方、グローバルに投資や事業を行う側からすると、理由は何であれ、税率が異なる複数の国が存在している以上、節税行為を行うのはある意味で当然のことである。今回、無形資産を使った節税について規制することができたとしても、各国間で税率に違いがあれば、何らかの形で節税を行うことは可能であり、究極的な解決方法は存在しない。

 国家とグローバル企業は対立的な図式として描かれることが多いが実際は違う。外国からのお金をめぐって本当に対立しているのは、国家同士なのである。また外国企業の節税問題を下手に指摘すると、国内で不当な政治力を使って脱税をしている企業や団体というタブーに触れてしまうという矛盾もある。
 外国からのお金は欲しいが、税金は他国より多く取りたいという各国のエゴがなくならない限り、この問題は永遠に続くことになるだろう。

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