ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

訪中した金正恩氏の特使が帰国ギリギリで習近平主席と会談。垣間見える中国側の苛立ち

 

 北朝鮮の金正恩第1書記の特使として中国を訪問している朝鮮人民軍総政治局長の崔竜海氏は5月24日、北京の人民大会堂で習近平国家主席と会談し、金正恩氏の新書を手渡した。
 習氏との会談は崔氏の帰国ギリギリになって実現したもので、このところの北朝鮮の行動に対する苛立ちが見て取れる。

 崔氏はまず5月22日に、中国共産党の王家瑞中央対外連絡部長と会談した。中国共産党の対外連絡部は、党としての外交政策を担当する部署。一方、諸外国に対する諜報活動を実施するというウラの顔も持ち合わせている。

 王部長は北朝鮮との外交を担当してきた人物で、北朝鮮側とのパイプが豊富。金第1書記と会談した経験もある。会談があったこと自体は政府系メディアが報じているが、その内容は明らかになっていない。

 続いて23日、崔氏は劉雲山中国共産党政治局常務委員(党内序列5位)と会談した。崔氏は「朝鮮半島問題を対話と協議への軌道へ戻すことに向 けた中国側の多大な努力を高く称賛する。中国側の提案を受け入れ、関係各国と対話を繰り広げたい」と述べ、中国側から北朝鮮に対して対話路線に戻るよう提案があり、北朝鮮もこれを了承したことを明らかにした。

 習氏との会談は崔氏が帰国するギリギリのタイミングである24日午後5時に行われた。金第1書記の親書を持つ崔氏が習氏に会えずに帰国した場合、今回の訪中は失敗に終わるところであった。中国側はあえて習氏との会談を最後の最後まで引き延ばした可能性が高い。
 会談で習氏は「朝鮮半島の非核化と安定は重要なテーマである」として、朝鮮半島の非核化と6カ国協議の再開について言及した。これに対して崔氏は、非核化については明確な返答を避けたものの「6カ国協議を含め、対話の道を模索したい」として、北朝鮮が6カ国協議の再開に前向きであることを強調した。

 中国側は北朝鮮による度重なる挑発行為や日本との独自外交について表面的には静観していたが、実際にはかなりの苛立ちを募らせていたと考えられる。その最大の理由は、北朝鮮の独自の動きを放置すれば、米国と北朝鮮が直接交渉を行い、中国が蚊帳の外に置かれる可能性があったからである。
 中国は6月に習氏の米国訪問を控えており、北朝鮮がこれ以上、挑発行為を行ったり、独自の外交を展開することは容認できない状況であった。

 中国と北朝鮮との間の実務的な交渉は、22日の王氏との会談で実施された可能性が高い。会談内容は公表されていないが、中国が北朝鮮に対して、挑発行為や米国との単独交渉を自制するようクギを刺し、北朝鮮側がこれに応じたと考えられる。北朝鮮が中国側の要求を受け入れたことで、劉氏との会談や最終的には習氏との会談が実現した。

 今回の会談によって、中国側が北朝鮮に対して6カ国協議への参加を促し、北朝鮮がこれを受け入れるという図式が成立した。中国は6月に予定されている米中首脳会談において、朝鮮半島問題の直接的な当事者として米国と交渉することが可能となった。とりあえず中国は、米国と北朝鮮が独自に話を進めてしまうという状況に対してはストップをかけることができたといってよいだろう。

 - 政治 ,

  関連記事

mof03
特定業種だけを優遇する租税特別措置は、法人税減税の効果を半減させてしまう

 財務省は2014年2月、特定業種の税金を優遇する「租税特別措置」の適用件数が2 …

no image
オスプレイの普天間移動が中止に。やっぱり天気が悪いと危なくて飛べないのか?

 米海兵隊は28日に予定してた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの岩国基地から普 …

abe201409
臨時国会冒頭解散・11月9日選挙という説が台頭。確実性はどの程度?

 安倍政権が9月29日に招集される秋の臨時国会冒頭で解散に踏み切るという話が永田 …

jinminkaihogun
中国人民解放軍が大規模な組織改編。軍の近代化と地域利権の排除が狙いか?

 中国人民解放軍は2016年2月1日、従来の軍区に代わり、新しく戦区という区域を …

kousokumuryouka
高速道路無料化は事実上廃止?。基本インフラさえ無料で利用できない日本の貧しさ

 国土交通省の審議会である国土幹線道路部会は、6月7日に開いた会合で、高速道路料 …

zenjindai
中国で全人代が開幕。中国政府の新体制が本格的にスタート

 中国の国会である第12期全国人民代表大会(全人代)第1回会議が5日、北京の人民 …

B2
米国が北朝鮮の牽制にとうとうB2爆撃機を投入。それが意味するところとは?

 北朝鮮と米韓の緊張が高まっているなか、米軍は3月28日、韓国で実施している米韓 …

seattle
シアトル市議会が時給15ドルの最低賃金を可決。現行から6割引き上げ

 米国ワシントン州のシアトル市議会は2014年6月4日、市の最低賃金を1時間15 …

okane003
日本の対外純資産が円安で大幅増大。今後の課題は投資利回りの向上だ

 財務省は5月28日、2012年末の対外資産・負債残高を発表した。それによると日 …

George Washington02
米経済誌が在日米軍の段階的撤退論を掲載。内容は冷静で、かなり客観的

 米経済誌ウォール・ストリート・ジャーナルは5月10日、「米軍は日本からの撤退を …