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エコノミスト誌が安倍首相は多重人格と指摘。それは日本人全体のことを指している

 

 英国の経済誌エコノミストが、安倍首相が多重人格であるという記事を掲載し、ちょっとした話題になっている。「日本とアベノミクス」と題した記事では、安倍首相は国粋主義者としての人格と自由主義経済を標榜する国際主義者としての人格の両方を持っていると指摘。アベノミクスがうまく機能しなくなった時には、再び国粋主義の亡霊を呼び覚ますのではないかと懸念を表明している。

 基本的に欧米のメディアには、日本をはじめとする東洋の国々は前近代的で遅れているという視点で物事を論じる傾向があり、その点は割り引いて考える必要がある。
 だが国粋主義と国際主義が併存しているという同誌の指摘はかなり的確といってよい。これは安倍氏個人というよりも、日本人全体がこの両者で揺れ動いているということを如実に表している。

 安倍氏が議長を務める産業競争力会議における成長戦略の議論は、まさに多重人格となっている日本人を象徴する内容となっている。
 民間議員からの提言や意見が、官僚サイドが望むターゲティング・ポリシー(特定産業を国家が支援する形式)的な立場と、基本は民間のイノベーションに任せ、規制緩和を進めるべきという自由主義的な立場で真っ二つに割れているのだ。

  ターゲティング・ポリシーなのか自由主義なのかという違いは、米国や英国でもかつて存在した議論であり、国粋主義と国際主義の対立というほどのものではないかもしれない(現在ではターゲティング・ポリシーはうまく機能しないというコンセンサスが得られつつあるが・・)。だが、安倍氏が情熱を傾けているといわれる憲法改正論議では、両者の対立軸が極めて鮮明になっている。

 時期の問題はともかく、現在の憲法に何らかの改正が必要であるという点で、国民のコンセンサスは徐々に得られつつあるといってよい。そしてその対象は基本的に憲法9条であると考えられていた。
 だが自民党が発表した憲法改正草案の内容は驚くべきものであった。同草案では、国民の権利よりも、国民の義務に主眼が置かれており、法の支配ではなく、法による国民の支配を意図した大日本帝国憲法に近い内容になっていたからである(本誌記事「橋下氏が自民憲法草案に懸念表明。今こそ議論すべき「法の支配」と「法による支配」の違い」参照)。

 日本人の多くが歴史認識問題などにおいて、各国から不当な扱いを受けていると考えている。それは半分当たっているかも知れないが、半分は外れている。日本が過去の歴史問題について、アジアだけでなく欧米各国からも執拗な攻撃を受けるのは、日本が完全な民主国家とは見なされていないからである。

 例えば、世界経済フォーラムが発表した世界男女平等ランキングで日本は101位となっており、周辺にはナイジェリアなど人権抑圧国家が並ぶレベルだ。また国際ジャーナリスト組織である「国境なき記者団」が発表した報道の自由度ランキングでは、日本はハイチや韓国と同レベルの53位であった。
 解説には「日本のフリージャーナリストは、国家から検閲を受け、警察からの脅迫、司法からの嫌がらせを受けている」と記されている。残念ながらこれは事実であり、この点を取ってみれば日本はとても民主国家とはいえない(本誌記事「世界の報道自由度ランキング。日本は53位と韓国やハイチ並み」参照)。こうしたランキングには恣意的なものも少なくないが、日本には言い訳ができない事態が多いことも事実なのだ。

 このようなスキだらけの状態では、冷酷な国際社会の中で交渉し、自説を通していくことは不可能である。要するに突っ込みどころが満載なのである。この状態で汚い駆け引きが行われる国際社会で戦おうというのはあまりにもナイーブに過ぎる。

 エコノミスト誌は、日本人が「国粋主義」と「国際主義」で揺れ動いていると指摘しているのではない。日本人は「非民主国家」と「民主国家」で揺れ動いていると指摘しているのだ。日本がナショナリズム的な政策を採用する場合でも、国際主義的な政策を採用する場合でも、民主主義と基本的人権だけは絶対に擁護するという強い意志と行動を示さなければ、欧米各国はここぞとばかりに日本を攻撃してくるだろう。そして、その価値観の是非について真正面から議論したところで、ほとんど意味はない。

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