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北朝鮮特使との会談でも実施された、相手を翻弄させる中国の外交テクニック。

 

 北朝鮮の金正恩第1書記の特使として中国を訪問した朝鮮人民軍総政治局長の崔竜海氏は、帰国ギリギリになってようやく習近平国家主席と会談することができた。重要な会談のセッティングでタイミングを引き延ばし、最大限の譲歩を引き出そうというのは、共産圏ではよく使われる外交的テクニックといわれる。今回の会談でもそれが遺憾なく発揮されたようだ。

 崔氏が習氏と会談したのは訪問最終日の午後5時であり、本来であれば飛行機に乗っている時間であった。おそらくギリギリのタイミングで呼び出されたものと思われる。
 北朝鮮も同様の工作はよく行っているので、中国側の出方は予想できたと思われるが、それにしても手ブラで帰ることはできないという状況を考えると、崔氏の心中は穏やかではなかったと考えられる(本誌記事「訪中した金正恩氏の特使が帰国ギリギリで習近平主席と会談」参照)。

 スケジュールを翻弄する作戦は、1972年の日中国国交回復交渉でも用いられた。
 日中国交回復という重大な責務を背負って中国に渡った田中角栄元首相と大平正芳元外相は、中国側の対応に仰天することになる。滞在先である迎賓館の部屋は、田中氏がもっとも好む17度に設定され、大好物である木村屋のあんパンが並べられていた。「すべて知り尽くしているぞ」という中国側の暗黙のプレッシャーに、2人は戦慄したという。

 当初は周恩来首相との会談が設定されたが、周氏が厳しい条件を提示してなかなか交渉が進まない(写真)。一方で肝心の毛沢東主席との会談が一向にセッティングされなかった。
 二人は手ブラで帰ることも覚悟したが、日程も押し迫った9月27日の深夜、二人は突然呼び出され、毛氏との会談が実現した。
 中国側のこうした心理作戦に日本側が翻弄されずに交渉をまとめることができたのは、豪傑といわれた田中氏の性格によるところが大きい。
 交渉が進まないことを心配した大平氏が田中氏に「角さん!どうすればいいだろうか?」と相談した。すると田中氏は「だから東大出はダメなんだ」と言った(大平氏は官僚出身)。大平氏が「では何かいい考えでも?」と聞くと田中氏は「それを考えるのが東大出の仕事だろ」と切り返したといわれている。この冗談で二人はすっかりハラが据わり、以後、まったく動じなくなったという。

 2002年に小泉元首相が訪朝した際も、北朝鮮側は時間の引き延ばしを画策したといわれている。だが日本側は、北朝鮮側が出した食事に一切手を付けず、持参の食材しか食べないという徹底ぶりで、成果がない場合には即座に帰国するという姿勢を前面に出し続けた。その結果、金正日氏の謝罪という大きな譲歩を引き出した。

 5月21日の飯島参与の訪朝では、本来極秘の会談であったところが、北朝鮮側から大々的にリークされてしまった。平壌の空港に取材陣がいることに飯島氏は驚きを隠せなかったといわれている(本誌記事「飯島参与の訪朝を受け入れた北朝鮮の窮状。朝鮮総連ビル落札問題も影響か?」参照)。
 飯島氏訪朝の背景には北朝鮮側の窮状があり、北朝鮮に不利な交渉になってしまうのは明らか。取材陣へのリークは、何とかこれを有利に運ぼうというテクニックというわけである。この点で日本側は、北朝鮮側に一本取られてしまったようである。

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