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日本の対外純資産が円安で大幅増大。今後の課題は投資利回りの向上だ

 

 財務省は5月28日、2012年末の対外資産・負債残高を発表した。それによると日本の対外純資産は前年比11.6%増の296兆3150億円となり、過去最高を更新した。対外純資産残高が増加するのは2年連続。円安の進行で対外資産の評価額が増えたほか、外国に対する投資が増加したことが原因。

 対外純資産は日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を差し引いて計算する。負債を差し引かない、対外資産残高は前年比13.8%増の661兆9020億円となり、増加は4年連続。一方、対外負債残高は15.7%増の365兆5880億円となり3年連続で増加した。海外投資家が日本の国債や株式への投資を増やしていることが主な要因。

 対外純資産はこれまで世界最大の債権国である日本を象徴する数字といわれてきた。だが最近では別の意味で、対外資産残高が注目されてはじめている。

 バブル崩壊以後、15年以上のデフレを経て、日本は輸出を中心とした途上国型の製造業モデルから、工場の海外移転、現地生産を中心とする投資型の製造業モデルに転換しつつある。
 これまで重要だったのは、輸出による儲けを示す貿易収支であったが、日本の貿易収支はすでに赤字に転落している。一方、今後重要になってくるのは、海外の工場や現地法人から還元されてくる配当や利子といった投資収益である。
 この投資収益を維持することができれば、工場が海外に移転しても日本は製造業で利益を上げ続けることができる。この投資収益の基準となる指標が対外資産の残高なのである。

 日本の対外資産は世界トップクラスだが、その資産内容は米国債に大きく偏ってきた。日本の対外資産のうち3分の1円程度が外国債でこの多くが米国債と考えられる。日本が2012年に海外から得た全体の投資収益(所得収支)は14.3兆円である。今回発表された2012年末の残高が662兆円であることを考えると、投資利回りは2.1%ということになる。国債を中心とした運用では、全体の利回りはこの程度になってしまう。

 だが今後、日本が投資によって経常収支を確保しようと思った場合には、この利回りをもう少し上げる必要がある。そのためには、投資収益率の高い直接投資の割合を増加させることや米国債以外の運用先を探すことが重要となってくる。
 海外直接投資の残高は約89兆円だが、これは対外資産全体の13.5%に過ぎない。海外生産の強化やM&Aによる企業買収を活発化させるとともに、利回りの高い債券の比率を上げることによって、全体の投資収益は大きく向上するはずだ。
 もし全体の投資利回りを1%向上させることができれば、年間6.7兆円もの収入になる。十分に検討する価値はあるだろう。

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