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少子化対策タスクフォースが提言書。だが対策を阻む本当の理由には触れずじまい

 

 政府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」(座長・佐藤博樹東大大学院教授)は5月28日、提言をまとめ森少子化相に提出した。待機児童解消の加速化や在宅勤務の普及策などを盛り込んだ。提言の内容は安倍首相と閣僚で構成する少子化社会対策会議に報告される(写真はタスクフォースに関連して若者から意見を聞く森少子化相)。

 提言では、少子化の進行について「社会経済の根幹を揺るがしかねない危機」であると指摘し、少子化を食い止めるには、子育てに対する支援、働き方の改革、出産に対する支援が不可欠であるとした。
 提言にはかなり細かい具体策まで網羅されており、それなりに意気込みも感じるが、支援策がうまく機能するのかについては疑問の声も出ている。少子化対策を阻んでいるもっとも重要な部分について、同提言では言及を避けているからである。

 同提言に限らず少子化対策の議論ですっぽりと抜け落ちているのは、仮に少子化対策が効果を上げた場合、将来子供を産む世代の負担があまりにも過大になるという問題である。

 現在、日本の人口ピラミッドは高齢者が多く、子供が少ない逆三角形の構造となっている。現在の働き盛りの世代は、数の多い高齢者を少ない人数で扶養する形となっている。
 だが少子化対策が進むと、高齢者に加えて人口ピラミッドの下の部分(子供)も増え始めることになる。高齢化はすぐには止まらないので、近い将来、働き盛りの世代は、増加が続く高齢者に加えて、増加し始めた子供までも負担しなければならなくなる。高齢者の扶養だけでも大変なのに、マクロ的に見てこの負担はあまりにも大きすぎる。

 現在の若者が子供を欲しているにも関わらず産もうとしないのは、この現実を敏感に察知しているからにほかならない。つまり少子化対策を本当に実施しようと思った場合には、高齢者に対する優遇の解消という問題を避けて通ることはできないのである。だがこれは日本では政治的タブーとなっており、切り込むことが非常に難しい。

 待機児童の問題にも同様の図式がある。各自治体で待機児童がなくならない理由は明確である。新規参入で利益が減ることを危惧する社会福祉法人を中心とした既存の保育施設運営者が、新規参入に猛烈に反対しているからだ。

 女性の職場環境問題も同じである。女性の社会進出と競争環境には相関があることが知られている。企業の競争環境が激しくなると、優秀な人材の確保が必要となり、企業側は正規社員や非正規社員、女性や男性といった社員の属性をあまり気にしなくなる。諸外国でも女性の社会進出の原動力になったのは、法律による強制ではなくグローバルな競争環境であった。
 国際的に見て低い利益水準に甘んじている日本企業が、女性の積極的な活用に動くインセンティブは少ないというのが現実だ。既存の企業経営者や男性を中心とした正社員を既得権益者と見れば、待機児童の問題や高齢者優遇問題と同じ図式になる。

 つまり、少子化対策とは、既得権権益をどのように解消してくのかという問題とほぼイコールなのである。本当に少子化対策を実現しようと思うのであれば、成長戦略や規制緩和という文脈で取り扱うべきテーマなのかもしれない。

 - 政治, 社会 ,

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