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EUが加盟6カ国の財政目標を緩和。とうとう緊縮路線からの転換を表明

 

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5月28日、フランスやスペインなどEU加盟6カ国の財政赤字削減目標を緩和すると発表した。欧州全体の景気失速と南欧諸国を中心にした高い失業率を背景に、これまでEUの基本政策であった緊縮路線から大きく転換させる(写真はバローゾ委員長)。

 目標緩和の対象となる国は、フランス、スペイン、ポーランド、ポルトガル、オランダ、スロベニアの6カ国。EUは財政赤字の水準を国内総生産(GDP)比で3%以下に抑制するすよう勧告しているが、その目標を達成するまでの期間に一定の猶予を与える。

 これまでEUは一貫して加盟国に対し財政再建を最優先するよう勧告してきた。
 これによってスペインやポルトガルといった財政問題を抱える国が危機に陥る事態は何とか回避してきた。EUでは緊縮財政を実施する一方、構造改革も各国に求めている。硬直化した経済モデルを改革することで、経済成長を実現したい考えだ。

 だが、南欧諸国を中心に高い失業率が続き、緊縮財政に対する政治的反発が日増しに高まってきている。また何とかプラス成長を維持してきたフランスがマイナスに転じる可能性が高くなってきており、各国は構造改革を進めるどころの状況ではなくなっている(本誌記事「失業率の悪化で国民の不満が爆発。欧州で緊縮策の一時棚上げが急浮上」参照)。
 今回のEUの決定は、こうした現実にEU側が妥協し、路線転換を図ったことを示している。EUは削減目標の緩和と引き替えに、各国に対して実施すべき構造改革を勧告した。例えばフランスに対しては、労働市場の解放や競争政策の導入、税制改革などを求めている。だが、フランス政府は内政干渉であるとして強く反発しており、これらの施策が各国で受け入れられる可能性は今のところ少ない。

 EUに対する反発は、これまでEUの基本政策を主導してきたドイツに対する反発でもある。ドイツは好調な経済と財政を背景に、緊縮財政と構造改革という原理原則を貫いてきた。頑なともいえるドイツの影響力が後退したことで、各国は財政出動がやりやすくなった。景気回復が容易になる反面、財政という欧州が抱える根本的な問題がさらに後回しにされる可能性も出てきたといえる。

 ドイツは今年の秋に総選挙を控えており、選挙が終了するまでは、大きな動きが取りにくい状況となっている。しばらくは緊縮路線を後退させ、景気の様子を見るという状況が続くことになるだろう。

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