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PFIが成長戦略の中核として急浮上。だがその実態はハコモノ行政の維持

 

 政府の成長戦略における中核的プランとして、民間資金を活用したインフラ整備(PFI)が急浮上してきている。PFIについては、政府の経済財政諮問会議や産業競争力会議でもたびたび取り上げられてきており、空港運営権の民間への売却や高速道路の空中権の活用、羽田・成田間の地下鉄建設などが具体策として議論されてきた(本誌記事「首都高改修の空中権活用。良案だが日本のインフラ問題を根本解決できるわけではない」参照)。
 これらについて、10年間のアクションプランとしてとりまとめ、より実現性を高めていく。

 PFIとは、プライベート・ファイナンス・イニシアティブの略で、公共施設の建設や維持管理、運営などについて、民間の資金や経営能力を活用する手法のことを指す。
 行政組織による非効率な建設、運営から脱却できる可能性があるが、一方で様々な問題を引き起こすリスクもある。

 PFIにおける最大の懸念材料は、事業運営の期間の長さである。民間の資金提供者(銀行、生保、ファンドなど)は、マーケットで資金を調達し、プロジェクトに投融資して利益を上げる。資金提供者の状況によって、プロジェクトの適切な長さは変わってくる。

 銀行は資金調達の多くを普通預金に頼っており、あまり長いプロジェクトには融資できない。普通預金は比較的短期で入れ替わるため、長く資金が固定されてしまうプロジェクトに対する融資には限度があるのだ。
 これに対して生保は銀行よりも運用期間が長い。生命保険は原則として加入者が死亡するまで保険金を支払う必要がない。加入者が死亡するまでの平均的な期間に合わせて運用先を選定することになるため、銀行よりは長期のプロジェクトに投融資することができる。一般に生保は15年程度の期間が適切といわれている。

 この点において、PFIが想定している期間はかなり長い。空港や鉄道などは20年から30年程度の償却期間が想定されており、一般的な民間の資金提供者の時間サイクルと合わないのだ。

 政府ではPFIへの年金基金の投入も検討している。年金は加入期間が長いので問題なさそうに見えるが実はそうでもない。日本の年金は積み立て方式ではなく、世代間負担方式なので、新しく加入した人の保険料は本人が受給年齢に達する前に使われてしまうのだ。
 また加入者の減少が進んでいる現状では、基金を取り崩す必要に迫られる可能性が高く、換金性が低いPFIへの出資は運営に弊害をもたらす可能性もある。

 実はPFI法はすでに15年近く前から施行されている。にも関わらず、こうした大型案件がこれまでほとんど存在してこなかったのは、制度面の問題もあるが、根本的には民間資金にとってリスクが高く、魅力がなかったからである。
 今ごろになって政府がPFIを積極的に取り上げるのは、これまでの過剰な公共事業が原因で日本の財政が危機的状況になり、公共事業をやり続ける財源がなくなったからである。ハコモノ行政を続けたい各省庁が白羽の矢を立てたのが、民間資金の導入というわけである。

 本来は道路や空港といった基本的インフラは、短期の採算にこだわらなくてもよい政府が責任を持って整備すべきものである。一方、民間資金はこのようなインフラ投資にではなく、革新的な技術開発に振り向けられることが望ましい。
 かつての日本は市場メカニズムが機能しており、黙っていても、民間資金は新しい技術開発に振り向けられてきた。だがその流れは止まり、途上国型のインフラ整備に政府が音頭を取って資金を誘導する状況となっている。
 成長戦略の中核がこのような後ろ向きな内容になってしまうのは、痛みを伴う改革を拒否し続けてきた日本の必然的な姿といえるだろう。

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