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安倍首相がGNI(国民総所得)増加を表明。なぜ今GNIと騒いでいるのか?

 

 安倍首相が自らの経済政策であるアベノミクスによって、10年後に国民総所得(GNI)を150万円増やすという目標を掲げたことで、GNIに対する関心が高まっている。

 GNIとは、日本人が国内外から得た所得の総額のことで、現在、経済規模を測定する基準となっているGDP(国内総生産)に、主に海外からの所得の受け取りを加えたものである。具体的には海外に設立した現地法人の配当や海外投資からのキャピタルゲインなどが所得に加わることになる。
 工場の海外移転や投資のグローバル化が進んだことで、国内だけに限定して経済規模を測定することが実態に合わなくなってきていることから、近年注目が高まっている指標である。

 だがこのGNIは、目新しい指標でも何でもない。GDP(国内総生産)という指標を導入する前はGNP(国民総生産)という指標が使われていたが、GNIはGNPとほぼ同義の指標なのである。だが国際的にGNPはあまり使われなくなり、日本も1994年以降、GNPからGDPに切り替えている。

 GNP(GNI)からGDPへ切り替えるきっかけとなったのは、やはり経済のグローバル化である。当時、日本企業は破竹の勢いで世界に輸出攻勢をかけており、米国は政治的圧力をかけて日本企業の現地法人化、現地生産化を強く求めていた。トヨタが米国社会に完全に根ざしているのは、その結果である。

 GNP(GNI)からGDPへの流れもその延長線上にある。以前の米国のように外国からの投資が多い国は、GNP(GNI)よりもGDPの方が大きくなる。現在の中国も同じような状況にある。逆に国内市場に魅力がなく、自国企業が海外に出て行ったり、外国企業が進出してこない国はGNP(GNI)の方が大きくなる。日本は近年、一貫してGNP(GNI)の方がGDPよりも多くなっている。

 GNP(GNI)からGDPへの変更が行われた当時、米国はGNP(GNI)よりもGDPの数字が大きく、その方が政治的に有利であった。またGNP(GNI)は為替の動向に左右されるため、連続した数値を分析するのに不便という実務上の問題もあり、GDPへの移行が進められた。しかも当時の日本は、米国の宣伝工作に乗せられた結果なのかは分からないが、経済成長ばかり追求する風潮はよくないとして、積極的にGNP(GNI)からGDPに変更しようというキャンペーンすら行われていた。

 現在は米国も対外投資が活発なことから、日本と同じくGDPよりもGNP(GNI)の方が数字が大きい。だがGDPをやめてGNP(GNI)に戻そうという動きは見られない。
 今の日本がGNIを重視しようとしているのは、日本国内の市場が縮小し、その傾向に歯止めがかからないという厳しい現実が背景にある。自国市場が順調に成長している米国にはGNP(GNI)に戻そうというインセンティブは働きにくい。
 海外進出企業の収益が今後の日本経済にとって重要なのは事実だが、最優先で取り組むべきは、国内市場を魅力的なものにするための諸改革である。国内市場が魅力的でなければ、GNIを重視したところで、それは経済問題の根本的な解決にはならないのである。

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