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高速道路無料化は事実上廃止?。基本インフラさえ無料で利用できない日本の貧しさ

 

 国土交通省の審議会である国土幹線道路部会は、6月7日に開いた会合で、高速道路料金の徴収期間を延長することを盛り込んだ中間答申案を提示した。従来高速道路は償却期間が終了すれば無料化する方針だったが、老朽化した道路の修繕費用捻出のため、無料化を先送りする。

 高速道路の無料化が困難であることは高速道路3社からの発表で明らかになっていた。

 現在、3社が管理する高速道路の総延長は約8700キロ。このうち開通後30年を経過した古い道路は4割(3200キロ)に達する。さらに2050年には50年を経過した道路が8割になる見込み。
 これらの古い道路を更新(建て替え)もしくは大規模修繕するためには、最大で10.6兆円の費用が必要になるとしている。国土幹線道路部会の答申案はこの現状を追認したものといる(本誌記事「高速道路無料化は永久に無理?高速3社が老朽化対策に10兆円が必要との試算」参照)。

 ある程度予想されていたこととはいえ、無料化という当初の前提を事実上破棄する内容の答申が出たことについては、疑問の声が上がっている。

 高速道路を現在の状態で維持しようとした場合、発表されている程度の費用がかかることは事実である。だが、施設の維持に一定の費用がかかることは建設当初から分かっていたことであり、今になって無料化の方針を撤回するというのは、維持費を考えずに際限なく新しい道路を作り続けてきた証拠でもある。同省は2014年の国会に関連法案を提出したい意向といわれるが、従来の整備計画に対する検証や総括がないまま、なし崩し的に料金徴収を継続するのでは国民の理解を得ることは難しいだろう。

 また料金徴収の延長が必要と主張している答申案の内容そのものについても、首をかしげざるを得ないような文言が並んでいる。答申案では、道路などの経年劣化が進んでいるとして「日本を荒廃するアメリカとしないためにも、持続可能なメンテナンスサイクルを早急に構築することが必要である」としている。つまりアメリカのような貧しい状況にならないように、料金徴収を延長する必要があるという主張だ。

 何をもってして「荒廃するアメリカ」としているのか、そもそも定義が不明確なのだが、おそらく想像するに、1980年代に米国の公共インフラの劣化が問題になったことを指しているものと思われる。だが当時も今もアメリカの純資本ストックは増加を続けており、年々米国のインフラは立派になっている。減少に転じている日本とは比較にならない状況だ。
 むしろ荒廃しているのは圧倒的に日本の方であり、その原因は修繕費用すら捻出できないほど、際限なく新規建設を続けるという無計画さにあったことは明らかである。しかも米国の高速道路は原則としてすべて無料であることを考えると、日本のインフラ計画の杜撰さは際立っている。

 答申でも指摘している通り、道路は国の基本インフラである。その基本インフラがいつまで経っても無料で利用することができないということは、今後も半永久的に日本の経済成長にボディーブローのようにマイナスの影響を与え続けるということを意味している。
 国民はこのことを決して忘れてはならないだろう。

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