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貸し出し増加はやはり無理?積み上がった当座預金残高に銀行は手を付けず

 

 日銀による異次元の量的緩和から3カ月が経過した。日銀が長期国債を一気に買い占めることで、銀行の運用をあえて困難にし、市中に資金を流通させる。当初想定されたこのようなシナリオは、目が覚めるような株式市場の高騰によって現実のものになるかに見えた。だが実際に市中に資金を出回らせるのはそう簡単なことではないようだ。

 3月に末に約58兆円だった日銀の当座預金残高は4月末には66兆円に、5月末には72兆円まで増えた。2カ月で14兆円も増加しており、年間60兆円から70兆円の資金を供給するという日銀の計画は順調に実行されつつある。
 だが日銀の量的緩和策が実際にマネーサプライ(マネーストック)に効いてくるためには、積み上がった当座預金残高を銀行がどのように処理するのかにかかっている。
 この点について3カ月経った現在でも、銀行には大きな変化は見られない。

 銀行の融資額は4月から5月にかけてほとんど増加しておらず横ばいの状態が続いている。また株式投資についても、銀行の4月と5月における売買動向はそれぞれ400億円から500億円という大幅な売り越しとなっている。株高を反映して株を買い進めるどことか、逆に利益確定を行っている可能性が高い。
 単純化すると、銀行はここ2カ月の間で国債を日銀に売却して得た現金を、そのまま口座に積み上げていることになる。業界用語ではこれを「ブタ積み」と呼んでいる。

 もちろん銀行にしてみれば、量的緩和策が始まり、国債が日銀に買い占められたからといってすぐに企業向け融資を増やすことはできない。安易な貸し出し増加は杜撰な審査と表裏一体だからである。
 当面はREITなど商業用不動産ローンを強化するとともに、消費税増税を前にした住宅の駆け込み需要を狙い個人向け住宅ローンを増やす方針であると考えられる。不動産関連の融資で最低限の収益を維持しながら、企業の設備投資意欲が本格的に改善するのを待つ戦略である。

 ただ、株高と円安が一服してしまったことで、商業用不動産ローンが順調に伸びるのか不透明な状況になってきた。また6月5日に発表した成長戦略の第3弾が市場の失望を買う内容であったことから、先行きに対するムードも萎んでしまっている。状況によっては、銀行は有効な運用先を見つけられず、このまま現金を積み上げてしまう可能性もある(本誌記事「安倍首相が成長戦略第3弾を発表。全体像が見えてきたが市場の失望を誘う内容」参照)。

 アベノミクスはこれまでのところムードや期待感でうまく歯車が回っていたが、そのフェーズは終了したと考えられる。今後は、企業向けの貸し出しがどの程度伸びるのか、マネーストックがどの程度増加するのかといった、現実の指標に注目が集まってくることになるだろう。

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