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成長戦略が完全に頓挫?だが本当に追い込まれているのは首相ではなく日本国民

 

 政府は6月12日に開催した産業競争力会議において成長戦略の最終案を固めた。企業の設備投資を促進するため「思い切った投資減税で法人負担を軽減する」と明記し、投資減税を前面に打ち出す内容に修正された(写真は成長戦略に関するメッセージを伝える安倍首相)。
 これは成長戦略の内容が市場から評価されていないことを受けての措置だが、投資減税の強調は、成長戦略の限界をかえって露呈するという皮肉な結果となっている。

 ひとくちに成長戦略といっても、その方法論は多岐にわたる。
 大きく分類すれば、①財政出動、②減税、③競争政策の3つに分類することができる。
 ①は公共事業のように直接企業に発注したり、特定分野の業界を資金援助したりするやり方である。②は税金を減らして企業の投資を間接的に支援する方法、③は規制緩和などによって企業が競争して活力が出るように誘導する方策である。

 単なる景気循環による不況の場合には①の方法が有効といわれる。だが、現在の日本はそうではなく、経済システムそのものが制度疲労を起こしていることが不況の原因となっており、①にはほとんど効果がない(実際に過去15年間まったく効果がなかった)。
 また、日本の財政が危機的状況であることを考えると、②についてもかなりのリスクが伴う。日本は法人税が高いといわれているが、それも真実ではない。日本には大企業を中心に様々な特例税制があり、大企業の実質的な税負担は30%程度と小さい。日本企業は高い法人税を課されている米国企業に比べると相当甘やかされている。今から減税を行ってもその効果は小さいだろう。

 現在の日本が70年代後半の米国と似たような状況であることを考えると、米国のような劇的な復活を実現するためには、③の規制緩和を大胆に進めることが必要になってくる。これがいわゆる市場が求める劇的な成長戦略という意味である。

 だが政府の成長戦略で話が出てくるのは、財政支援の話ばかりであり、市場から評価されてないと分かると、今度は減税一色となった。この状況は、③の規制緩和についてどれほど政府が踏み込みたくないのかを逆に浮き彫りにする結果となっている。

 政府が規制緩和に踏み込みたくないのは、いわゆる既得権益を持った抵抗勢力が強行に反対するからだといわれる。だが本当に一部の抵抗勢力が国民の総意を無視して、無謀な政治権力を行使しているのだろうか?もちろん、規制緩和に反対して激しいロビー活動をしている団体やそれに荷担している官僚が多数存在しているのは事実だろう。
 だが規制緩和を実行されて困るのは、一部の既得権益者だけではない。日本は官庁を頂点に、規制に守られた大企業とその下請け企業で構成される重層的な産業構造が形成されている。規制緩和は最終的には、日本の大半のサラリーマン家庭の生活を直撃する。規制緩和を実行されて困らないのは、一部の高い能力を持った人材と外資系企業だけである。政府が規制緩和に尻込みするのは、日本の大多数を占める一般サラリーマン家庭からの反発を恐れているからだ。

 極論を言えば規制緩和とは、今の秩序は崩れないが、皆でさらに貧しくなる道を選ぶのか、それとも、序列が崩れて自分が損する側に回るかもしれないが、日本全体の底上げを望むのか、という国民に対する踏み絵なのである。
 成長戦略の限界が露呈したことで追い込まれているように見える安倍政権だが、本当に追い込まれているのは日本国民なのである。

 - 政治, 経済 ,

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