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G8でグローバル企業の租税回避対策が骨抜きになってしまう理由

 

 シリア問題と並んで主要国首脳会議(G8サミット)の議題の一つであった租税回避問題は、進展が見られなかったシリア問題と同様(本誌記事「G8はシリア問題をめぐってバラバラ」参照)、目立った成果が得られないまま会議の閉幕を迎えた。

 このところアマゾン、スターバックス、グーグル、アップルといった米国のグローバル企業が、節税を積極的に行い法人税をあまり納めていないという問題が指摘されていた。
 今回のG8では、議長国である英国のキャメロン首相が租税回避問題を会議の主要議題とすることを強く求めたほか、ドイツのメルケル首相も「グローバル企業によるこうした行為は許されない」と発言し、各国が一致して対策を強化することを示唆していた(本誌記事「国際的課税逃れへの包囲網が強まる」参照)。

 だが実際にフタを開けてみれば、各国の税務当局が情報共有を行うのみというかなり後ろ向きな結果に終わった。だがこのような結末になることは最初からある程度予想されていた。というのも欧州がこの問題に積極的になること自体が自己矛盾となっているからだ。

 一連の租税回避で攻撃対象となっているのは、ほとんどが米国企業である。米国内でもグローバル企業の節税行動は政治問題になってはいるが、最終的にこれらの企業の利益が増加すれば米国の利益となるため、米国はこの問題にはあまり高い関心を払っていない。しかも米国の法人税は国際的に見てもっとも高い部類に入り、どちらかというと欧州の低税率国に税収を奪われる被害者でもある。

 むしろ欧州は低い税率で世界からお金を集めている側であり、問題が起きているのは、欧州内部での税率の違いによって、特する国と損する国が存在しているからである。欧州の主要国で税率が低いのは、英国とドイツであり、英国は自らの植民地でタックスヘイブン(租税回避地)の運営まで行っている。一方フランスなどは税率が高く、資金が国外に流出している。英国とドイツは、アイルランドなどさらに税率の低い国を矛先にして、自らが低税率で資金を集めていることは棚上げしている状況だ。

 結局のところ、多くの国が低い税率で他国の資金を効率よく集めたいと思っており、国際的に租税回避をなくそうとしても、この点で利害が一致しない。今回のG8での決定は、無節操な租税回避行動を抑制する一定の役割は果たすと考えられるが、根本的な解決手段にはならないだろう。

 それにしても、もっとも税率の高い米国が企業や資金の流出に悩んでいないというのは皮肉な結果である。企業は市場に魅力があれば、たとえ税率が高くても、集まってくるもののようである。

 - 政治, 経済 ,

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