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スノーデン氏の告発が英国に飛び火。政府関係者と市民の意識にはズレがある?

 

 米国の国民監視システムである「PRISM」の存在を暴露した元CIA(中央情報局)職員のエドワード・スノーデン氏が、あらたな告発を行った。今回の告発内容は米国だけでなく英国の諜報機関も大規模な盗聴を行っていたというもの。

 スノーデン氏から情報提供を受けている英ガーディアン紙が報じたところによると、英国の情報機関である政府通信本部(GCHQ、写真)は、光ファイバーケーブルに盗聴装置を仕掛けており、膨大な量のメールや通話を盗聴し、米NSA(国家安全保障局)と共有しているという。盗聴のプロジェクト名は「Tempora」というコードネームで呼ばれており、盗聴したデータは約30日間保存される。

 米国はすでにかなり以前からエシュロンと呼ばれる通信傍受システムを構築しており、英国など同盟国と通話の盗聴や情報の共有を行ってきた。また同盟国同士でも互いの通信を盗聴することは日常的に行われており、諜報の世界の常識に照らせば、今回の件は特に驚くべき話ではない。
 日本が米国との貿易交渉を行っていた1990年代、CIAが日本側の交渉担当者の電話を盗聴していた話はあまりにも有名だ。
 また現実には盗聴といっても膨大な量の通話やメール内容を把握することは並大抵のことではない。包括的、マクロ的な分析をしようと思えば、個人の細かい情報を追うことはできず、特定人物を集中して追跡すれば、それ以外の人の情報分析はおざなりになる。結果として、市民が懸念するほどのプライバシーの侵害が実際に発生する可能性は低い。むしろ、法を超えて情報収集することの危険性は別なところにある(本誌記事「米国で国民監視システムの存在が明らかに。本質的問題は市民のプライバシーにあらず」参照)。

 だが諜報機関や政府高官の常識と世論の常識が乖離することはよく見られる現象である。米国や英国の政府高官はスノーデン氏が暴露した件をそれほど重大なこととは認識しておらず、スノーデン氏を単純にスパイ容疑で訴追すればよいと考えているフシがある。だが市民の受け取り方は必ずしもそうではない。
 今回の件が米国内にとどまらず、米国の諜報活動に対するアレルギーの強い欧州にも飛び火したことで、状況が思わぬ方向に展開する可能性も出てきた。市民運動出身でリベラル派からも一定の支持があるオバマ大統領に対するイメージの悪化である。

 オバマ大統領はその清潔なイメーとは裏腹に、CIA長官に旧知の人物であるブレナン氏を据え、無人機による非合法な暗殺を強化するなど、ブッシュ前政権よりも冷酷な面がある。
 オバマ大統領はこうしたイメージの刷新を狙ってか、新しいFBI長官に、ジェームズ・コミー元司法副長官を指名した。コミー氏は司法副長官時代、令状なしの盗聴に強く反対した経緯があり、人権を重視する姿勢をアピールをするにはもってこいの人物だ。

 米国には今回話題となっているCIAやFBI、NSA以外にも多くの諜報機関が存在している。それぞれの機関は情報を共有し協力することもあるが、互いに監視し敵対する面も持ち合わせている。今回のスノーデン氏の暴露事件についても、他の諜報機関や政権内部の人物がまったく関与していないという保障はない。場合によっては、諜報に関する立法措置を強化するために、あえて暴露事件を黙認していた可能性も排除できない。

 諜報に関する分野では「絶対」は存在しない。日本人にとってはまだ海の向こうの出来事だが、あらゆる可能性を含めて柔軟に思考するという姿勢が重要となる。

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