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日銀岩田副総裁によれば期待インフレ率は上昇しているというが・・・・

 

 日銀の岩田副総裁は、経済紙とのインタビューにおいて、日銀の金融政策として実質金利の低下をもっとも重視するという姿勢を明らかにした。日銀の量的緩和によって予想インフレ率が上昇、これによって実質金利の低下を促し、設備投資や消費に影響を与えることができるという。

 実質金利とは名目上の金利から物価変動率(インフレ率)を引いたものを指す。現在、日本の長期金利は量的緩和によって上昇しているが、それでも0.8%台であり、歴史的に見れば極めて低い水準となっている。だが日本はデフレが続いており、これだけ低い金利でも、企業はお金を借りて設備投資を行おうとしない。

 ここで市場の期待インフレ率が2%になれば(皆が2%のインフレになると考えるようになれば)、実質金利は0.8%から2%を引いてマイナス1.2%となる。金利がマイナスということは、現金を持っていると実質的に損をするということであり、設備投資、株式、不動産などに資金が回ってくることになる。

 日銀の量的緩和はまさにこの効果を狙ったものといえる。岩田氏の見解によれば、期待インフレ率は順調に上昇しており、実質金利をマイナスにする効果が出ているということになる。もしそうだとすれば、遠からず企業の設備投資意欲も回復してくるはずだ。
 一方、この考えに賛同しない人もいる。企業が設備投資を行わないのは、日本の産業構造が制度疲労を起こしているからで、金融的な問題ではないとの考え方だ。この立場に立てば、いくら金融政策を実施しても設備投資は容易には回復しないことになる。

 どちらが正しいのかは今後の結果を見ないと分からない。ただ岩田氏の見解で少々説得力に欠けるのが期待インフレ率をどう把握するかという問題である。
 量的緩和策で株高や円安になったことをもってして期待インフレ率が高いというのは少々無理がある。株価は元来不安定な動きをするものであり、これを絶対的な指標にしてしまうと、株価が下落した場合には、一気にシナリオが崩れてしまうからだ。
 現実的には、物価連動債の利回りから予想インフレ率を算出するブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を期待インフレ率の指標として用いることが多く、岩田氏もこの指標について言及している。だが、日本の場合、同債券の市場が十分に成熟しておらず、価格の乱高下が激しくなりやすいという問題がある。この指標をもって期待インフレ率とすることも少々危険なのである(ちなみに同債券の利回りは一時2%になったが現在は低下している)。

 期待インフレ率の議論を始めてしまうと、現在のところは、社会の雰囲気という定量的ではないものに頼らざるを得ない部分がどうしても出てきてしまうのだ。
 結局のところ、設備投資や消費が改善していることを示す具体的数値が出てくることが最大の説得材料であり、安倍首相が設備投資減税にこだわるのもそのあたりに理由がある。

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