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エジプトの反政府デモが重大局面。軍の介入は今後の民主化運動にどう影響するのか?

 

 モルシ大統領の退陣を求める大規模なデモが続くエジプトで、これまで中立を保っていた軍が介入する可能性が高まってきた。
 軍は声明を発表し、モルシ大統領側と反大統領側の双方に対して「48時間以内の解決策」を模索するよう要求。解決策を見つけることができなければ、軍が「将来に向けたロードマップ」を作成するとしている。事実上、モルシ大統領の退陣と大統領選挙の実施を示唆していると考えられる。
 軍の介入でエジプトの反政府デモは重大な局面を迎えつつある。だがモルシ大統領に反対する勢力には、純粋な民主主義者と軍事政権の復帰を望む勢力が入り交じっており、仮にモルシ大統領が退陣したとしても、今後の方向性は流動的だ。

 エジプトをはじめ中東各国では軍部の存在が民主化運動と大きく関係している。
 これは中東の民主化運動の多くが、王政から民主主義へというシンプルな道筋を辿らず、イスラム革命によって王政が倒れた後、一旦軍事政権が設立され、その後、軍事政権に対する民主化運動が起こるという2つのステップを経ているからである。
 エジプトの場合は、ムバラク軍事政権に対する民主化運動(アラブの春)によって同政権は倒れたが、結局、新しく誕生したモルシ政権は、王政時代を彷彿とさせるような古いイスラム主義的な価値観を強く打ち出していた。
 今回、軍の主導でモルシ政権が倒れた場合、それは軍の功績となり、次の政権は軍の影響力を強く受けることになる。軍内部にも民主派と軍事政権派の確執があるといわれており、場合によっては以前の軍事政権に逆戻りという事態にもなりかねない。

 もっとも軍事政権の存在が中東の民主化にとって必ずしも悪い面をもたらしてきたわけではないところにこの問題の複雑さがある。伝統的な慣習が色濃く残るイスラム圏では、強権的な軍事政権の存在によって、古い価値観が打破されてきた側面がある。特に女性の社会進出などは軍事政権の存在がなければ実現しなかっただろう。

 単純な比較は危険だが、この状況は日本にも通じるところがある。明治維新によって成立した新政府は限りなく軍事政権に近い体制であったが、強権的な軍の存在が封建的な古い日本の慣習を打破するきっかけになったのも事実である。だが日本人自身による民主化運動(大正デモクラシー)は失敗に終わり、軍部は肥大化。結局、敗戦と米国占領という外圧によって民主憲法が強制導入されることになった。現在のエジプトは、日本における大正デモクラシーの状況にあるといえる。

 だが中東諸国には、いい意味でも悪い意味でも、日本における米国のような国は存在しない。エジプトが今後、本当の民主国家になるためには、軍が民主的な選挙を主導した後、自らその権力を放棄し、新しく誕生した政権の指揮下に入るという決断が必要となる。今後、エジプトが本物の民主国家を建設できるのかは、軍自身の手に大きくゆだねられている。

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