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輸入インフレの足音が聞こえる。政府は必死に企業に賃上げを要請しているが・・・

 

 円安が進展する中、これまで続いてきたデフレ傾向が一部でプラス転換する傾向が見え始めている。デフレからの脱却は望ましいことではあるが、それは輸入インフレのリスクと背中合わせでもある。

 総務省が6月28日に発表した5月の全国消費者物価指数(生鮮食品除く総合)は前年同月比で横ばいの100.0となり、7カ月ぶりにマイナス圏を脱した。来月にはプラス転換するとの見方を大半を占めており、長期のデフレから脱却する兆しが見え始めた。

 ただこれまでも言われたように、物価上昇はまだら模様となっている。価格上昇幅が大きかったのはやはりエネルギー関連であった。
 電力会社の値上げによって電気料金は8.8%、ガス代は2.1%も上昇している。政府から保護され競争がなく、一方的に価格を決定できる寡占企業が率先して値上げをしている実態が浮かび上がる。

 だが、これまで何とか値上げをせずに対応してきた民間企業も円安の進展によって値上げを実施することろが増えてきている。これまで円高メリットによって低価格を実現できていた外食や菓子類など、いわばデフレの象徴となっていた製品価格がプラスに転じているのである。
 すでにネット通販の世界では輸入食材の値上げが相次ぎ、ネットを活用している主婦の間ではちょっとした騒ぎになっていた。直接輸入した食材だけにとどまらず、それを利用した加工食品や外食にも値上げが波及してきたことを示している。

 政府からは経済界に対して賃上げを要請する声が相次いでいる。田村厚労相が最低賃金の引き上げを強く求める発言を行ったほか、甘利経済再生担当相は経済界に対して物価上昇に先行して賃上げを実施するよう要請した。この背景には、輸入価格の上昇によってインフレの悪い面が顕在化し、アベノミクスに対する批判が出てくることへの強い警戒感がある。

 だがこれらの発言はちょっとした矛盾をはらむ。一般的なサラリーマン家庭にとってよい話ではないが、2%の物価目標を掲げるアベノミクスの真の狙いは、実質金利の低下と実質賃金の抑制にあるといわれている。物価が上昇するものの、賃金がそれに追いつかなければ実質的な賃下げになる。多くの関係者は表だって口にしないが、アベノミクスはこれが実現できてはじめてその効果を発揮するのだ。その意味で、企業に対して先行賃上げを要請するのは、一種の自己矛盾となる。

 アベノミクスの真の狙いやその効果のほどはともかくとして、輸入価格の上昇によるインフレの足音は着実に大きくなってきている。インフレ率を上回る経済成長がなければ、仮に賃上げが行われてたとしても実質的な購買力は変わらない。重要なのは賃金の絶対値ではなく、実質成長率なのである。

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