米中戦略対話がワシントンでスタート。表向きはサイバーセキュリティが話題だが・・・
第5回米中戦略経済対話が7月10日から米国の首都ワシントンで始まった。中国側からは、汪洋副総理、楊潔チ国務委員が習近平国家主席の特別代表とした参加する。米側からはルー財務長官、ケリー国務長官らが出席している。
米中戦略経済対話は、米中両国間の重要な課題に関する実務的な議論を行うための場で、対象となる分野は、安全保障、経済、金融、貿易、エネルギーなど多岐にわたる。今回の会議では、今年6月に米国で行われた米中首脳会談での成果をベースに、より突っ込んだ議論が行われる予定。
形式的には、米中間での懸案事項となっているサイバーセキュリティの問題などについて集中的に議論が行われるとされているが、おそらくそれは表面的なものであろう。
今回の会議の主要な議題は、やはりアジア太平洋地域における米中間の軍事バランスに関するものと思われる。米国は軍事力を中東からアジア地域にシフトする、いわゆる「リバランス戦略」を薦めている。一方中国は、沿岸地域における一定の制海権確保を強く求めている。両国の軍事的な線引きをどこに設定するのかが、双方にとって非常に重要な課題となっている。
米中間では双方の軍事的な方向性を示すロードマップの策定を開始しており、今回の会議もその実務的な作業の一部を構成していると思われる(本誌記事「デンプシー米統合参謀本部議長が習近平氏と会談。米中のアジア戦略交渉がスタート?」参照)。
また経済面では、早ければ今年9月にも予定されている米国の量的緩和縮小に関連し、新興国からの資金流出への対応策が話し合われると考えられる。同会議にはFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長と中国人民銀行の周小川総裁も出席している。中国経済が非常に微妙な状況になっていることを考えると、今後の量的緩和縮小のスケジュールにも影響を与えるかもしれない。
今回の会議にあたって米中両国は、6月に行われた米中首脳会談の成果がベースになっていることを強調している。米中首脳会談は、首都ワシントンではなくカリフォルニアのリゾート施設で行われ、両首脳はかなり長時間にわたって突っ込んだ議論を行ったとみられる。だが肝心の会談内容や出席者など詳細な情報はほとんど明らかになっていない。日本政府も会談内容について十分な情報を得られていないという。
今回の会議についても、実際に議論された内容ははっきりとした形では公表されない可能性が高い。米中首脳会談での内容も含めて、米中間で何が話し合われているのかは、その後の米中の具体的な動きを見て判断するよりほかないだろう。
関連記事
-
-
米国で雇用の質が徐々に改善。NYではウォール街に頼らない雇用増を実現
景気拡大が続く米国で雇用の質が改善している。ニューヨークでは、かつてはウォール …
-
-
まるでヤクザ映画?政府が財界に「決意を示せ」と設備投資増強を要請
経団連の榊原定征会長は2015年11月26日、政府が開催した官民対話で、設備投 …
-
-
日本型経営は名実共に終了?パナソニックが、とうとう下請けへの支払い条件変更へ
下請け企業との共存を掲げ、他社よりも有利な支払い条件を提示してきたことで知られ …
-
-
東芝が監査法人の適正意見なしで決算発表を強硬。日本市場はとうとうレッドラインを越えた
経営危機に陥っている東芝は2017年4月11日、2度にわたって延期していた20 …
-
-
新疆ウイグル自治区でまた衝突が発生。取材制限で実態は闇に包まれたまま
中国国営の新華社通信は6月26日、中国北西部の新疆ウイグル自治区で「ナイフで武 …
-
-
財務省が歳出削減に本腰?社会保障費に加えて文教費もその対象に
財務省が歳出削減に本腰を入れ始めている。背景にあるのは日本の財政問題である。消 …
-
-
フェイスブックが予想外の好決算。インスタグラムが貢献か?
SNS最大手の米フェイスブックは2016年1月27日、2015年10~12月期 …
-
-
バイデン副大統領の息子が、ウクライナのガス会社役員に就任
バイデン米副大統領の息子であるハンター氏が、ウクライナの天然ガス会社であるブリ …
-
-
パナマ文書が公開。三木谷氏の名前もあるが、大した話ではない可能性が高い
ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)は2016年5月16日、タックスヘイ …
-
-
2月の貿易収支は先月に引き続いて改善。輸出の米国依存がより鮮明に
財務省は2015年3月18日、2月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差し …