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DeNA創業者の南場智子氏が現場復帰。社長復帰説がくすぶっているが

 

 夫の看病を理由にDeNAの社長を退任し、近頃、フルタイムの場復帰を宣言した南場智子氏のメディア露出が目立っている。日本経済新聞社から自叙伝「不格好経営」を出版し、同社グループを中心に多数のインタビュー記事の取材を受けている。

 夫の看病が一段落したとのことで、喜ばしい話ではあるのだが、証券市場にはなんともいえない微妙な雰囲気が漂っている。
 DeNAは南場氏が創業した会社であり、南場氏は13%の株式を保有する同社のオーナーである。だが現場復帰したとはいえ、南場氏のポジションは一介の取締役。会長として株主の立場から取締役会に影響を及ぼすわけでもなく、かといって執行のトップでもない。

 南場氏の執行上の正式な立場は不明だが、理屈上、同社の守安CEOは自分を解雇できる権限を持った大株主に対して業務執行命令を下すという奇妙な状況になっている。華々しい南場氏のメディア露出とは対照的に、同社の意思決定メカニズムには不透明感が増している。

 この状況をさらに複雑にしているのが、同社が設定したアドバイザリーボードだ。同社では、ITやグローバルビジネスに見識を持つ有識者の知見を活用することを目的として、2013年6月にアドバイザリーボードの設置を発表している。アドバイザリーボードのメンバーは、元ソニー会長の出井伸之氏やサンリオ常務の鳩山玲人氏などの名前が並ぶ。
 もちろん外部の有識者から助言をもらうことは悪いことではない。だが人選の基準は今ひとつはっきりしない。出井氏はソニーが同社に出資するきっかけとなった人物だが、現在のソニーはすでに同社株を売却している。業務上の関係はほとんどなくなっており、出井氏の役割は今ひとつ不明だ。また鳩山氏は同社の社外役員も兼務しており重複感がある。現在の同社は意思決定に際して複雑なベクトルが交差する状況といえる。

 創業オーナーが後任に指名したサラリーマン社長を議決権を背景に自ら更迭するケースは多い。ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長は自らが指名した後継者である玉塚元一氏を事実上更迭し自身がトップに復帰した。古くは消費者金融大手の武富士会長だった故武井保雄氏は何度も後継者を指名しては更迭するという人事を繰り返していた。
 創業者の会社に対する思い入れは強く、しかも株式を大量に保有していれば会社の業績はそのまま自身の資産に影響する。サラリーマンとして社長に就任する人物とは温度差があって当然である。株主から見れば、ユニクロの柳井氏のように、穏便な経営に終始するサラリーマン社長を更迭し、自身が復帰することで再び好業績を取り戻せるのであれば、それは喜ばしいことといえるかもしれない。

 南場氏は復帰の理由や同社での執行上の役割をはっきりと説明しておらず、社長復帰についても言及していない。だが南場氏が退任した時期は、同社のいわゆるコンプガチャ・システムが反社会的であると批判され始めた時期と重なっている。その後同社はこの問題を何とか解決し現在では球団を所有するまでに成長している。自分であればもっと会社を成長させることができたという歯がゆい思いがあってもおかしくはない。

 一般的な創業オーナーの振る舞いや株式会社の意思決定ルールからすると、現在の南場氏の行動は中途半端に映る。株主としては南場氏のカリスマ性に賭けてよいのかどうか大いに迷うところだろう。同社はそろそろ、創業オーナーが個人的な力量で引っ張る会社であるのか、既存の大手企業と同様、特定の創業者の影響を排除したサラリーマン型の会社であるのか、明確な方向性を示す時期に来ている。そのときにはおのずと南場氏の処遇もハッキリとしたものになるだろう。

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