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「幸せの国ブータン」で初の政権交代。理想は大事だが、識字率50%という現実は重い

 

 ヒマラヤの山中に位置する王国ブータンで7月13日、国民議会(下院)の選挙が行われた。野党国民民主党が47議席中32議席を獲得し圧勝した。同国での2度目の総選挙であり、初の政権交代となる。

 ブータンは、2008年に王制から立憲君主制に移行している。最初の総選挙では、歴代国王の側近だった人物が率いるブータン調和党が与党となり首相を輩出した。同国では、国民の豊かさを図る新しい指標GNH「国民総幸福」を提唱しており、精神的な豊かさを重視する政策を行っている。
 日本でも一時期「幸せの国ブータン」として話題になり、物質的な豊かさに対するアンチテーゼとしてちょっとしたブームにもなった。実際、2005の国勢調査では国民の97%が「幸せ」と答えている。また同国のワンチュク国王はその端正な顔立ちから国内だけでなく、各国でも絶大な人気を誇っている。

 だが現実はそう甘くない。同国の1人あたりのGDPは3000ドルと中国の半分、日本の15分の1であり世界の中でも最貧国の部類に入る。心が豊かであればといっていられる水準ではない。また国民の識字率は50%程度しかなく、国民は最低限の教育を受ける権利さえ保護されていない。つまり「あたなは幸せですか?」というアンケート用紙の意味を理解できる人は国民の半分しかいないのである。

 ブータン政府はこれまで、外国人観光客に対してはすべて事前申請を求め、指定の宿初施設での滞在しか許可しないなど、外国文化の流入を極度に警戒してきた。だが最近は貨幣経済が徐々に浸透しはじめ、貧富の格差が拡大していた。 
 この状況に拍車をかけたのがインドとの関係である。ブータンは基本的にインドからの援助に依存する体質となっているが、最近ではブータン政府が中国との独自外交を行うなど、インドに対して距離を置き始めている。これに対してインド側が不快感を示し、経済制裁を実施したことから燃料価格が高騰、国民の不満が一気に高まったといわれている。

  ブータン国王は今でも国民から尊敬されており、王制から立憲君主制への移行を果たした理想的な開明君主といえるだろう。今回の総選挙で与党となる国民民主党も、王族が設立した政党であり、王室との関係は深い。政策面で大きな変化はないといわれている。
 だが、国民からの不満を背景に政権交代が実現したという事実は、少なくとも立憲君主制移行後、国民と政治の蜜月期間は終了したことを意味している。ブータンの立憲君主制の真価が問われるのはこれからである。

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