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民主化に逆行?ミャンマーで仏教徒女性の異教徒との結婚を制限する法案が波紋を呼ぶ

 

 民主化と経済開放が続くミャンマーで、議会に提出が予定されているある法案をめぐって内外から懸念の声が高まっている。
 提出が検討されているのは、仏教徒の女性の婚姻を制限する法律案。内容は仏教徒の女性が異教徒と結婚する場合、相手方の男性が仏教に改宗しなければならないというもの。事実上、仏教徒の女性を他の宗教に改宗させないための法案といえる。
 ミャンマーは国民の9割が仏教徒だが、イスラム系少数民族との根強い対立がある。最近はイスラム教に改宗する若い女性が増えてきていることから仏教界側が危機感を募らせていた。今回の法案提出も、一部の強硬な仏教界側の強い要請があったといわれている。

 ミャンマーでは、経済開放と民主化が進んでいるが、軍事政権による弾圧的な政治が後退すると、今度は民族的な対立が顕在化するという事態になっている。
 昨年10月には、ミャンマー西部 のアラカン州で、仏教徒であるアラカン民族が少数派でイスラム教徒のロヒンギャ族の集落を焼き討ちし、多数の死者を出すという事件が発生した。ロヒンギャ民族はミャンマー政府からは正式な国民として認められておらず、大量の難民が発生している。

 実際に法案が提出されるのか、また提出された場合に可決されるかは流動的だが、もし可決された場合には、国内の宗教対立が激化することは間違いない。また婚姻を制限されるのが女性だけであるという点から、先進国から女性差別であるとして非難される可能性もある。

 ミャンマーは弾圧的な軍事政権と、アウン・サン・スー・チー氏をリーダーとする民主化運動グループが対立するという図式であったが、欧米からの圧力によって軍事政権側が譲歩し、民主化がスタートした。憲法上の制約など課題はあるが、アウン・サン・スー・チー氏は大統領選挙への出馬を目指して準備を開始している。

 これまでは軍事政権の独裁的な政治によって民族対立は封じ込められてきたが、民主化と経済開放が進んだ今、こうした問題が全面に出てきている。アウン・サン・スー・チー氏は大統領選への出馬を意識し、民族問題についてはあいまいな態度に終始している(本誌記事「民主活動家から権力者へ。とうとう大統領への野心を表明したアウン・サン・スー・チー氏」参照)。

 ミャンマーは最後の経済フロンティアとして、欧米企業や日本企業が熱い視線を送っている。だが軍事政権からの解放は始まったばかりであり、今後こうした内政上の問題は次々に噴出してくる可能性が高い。今回の法難提出をめぐる騒動は、アジア最後のフロンティアには相応のリスクが存在することをあらためて示している。

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