ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

米自動車産業は奇跡の復活を遂げたのに、なぜデトロイト市は破綻したのか?

 

 GM(ゼネラル・モーターズ)やフォードなどが本拠を構える自動車の街、米デトロイト市が7月18日、米連邦破産法第9条を申請し破綻した。負債総額は180億ドル(1兆8000億円)で、米国の自治体の破綻としては過去最大規模となる。

 デトロイトは1920年代から米国の主要な自動車メーカーが本拠地を構え、世界最大の自動車の街として栄えてきた。
 戦後は自動車産業の発展に伴い人口はさらに増大、ピーク時には180万人を超えていた。だが80年代以降の米自動車産業の衰退に合わせて人口も減少し、リーマンショックでGMが破綻する頃には70万人近くにまで減少してしまった。

 リーマンショック後の米国の自動車産業はめざましい回復を見せ、GMも完全復活したが、デトロイト市の税収は思いのほか伸びず、財政はさらに悪化、今回の破綻となった。
 自動車産業が復活したにも関わらず税収が伸びなかった背景には、米国のダイナミズムがある。米国は日本に比べて人やモノの移動が激しい。ある都市の凋落傾向がはっきりしてくると、多くの会社や人が条件のよい場所に一斉に移動してしまうという特徴がある。

 デトロイトの場合、街が開発された時期が古く、中心部には築100年の住宅が当たり前のように並んでいる(日本と異なり米国の住宅は良質なので、100年以上普通に使える)。当初は比較的賃金の高い熟練工向けの良質な住宅として整備されたが、現在の高賃金労働者の多くは、新しく開発された郊外の住宅地に住んでいる。デトロイトの中心部は、サービス業などに従事する低賃金労働者や移民などが多く住んでおり、自動車産業の復活の恩恵を直接的には受けていない。
 一方デトロイトの郊外には、自動車産業のホワイトカラー層や日本などからの駐在員が多く住む高級住宅地が多数開発されている。またデトロイト郊外にはミシガン大学など著名大学が多く、アナーバーという街では、ミシガン大学出身者の頭脳を確保するため、Googleも拠点を構えている。だがこれらの地区は、行政区域上はデトロイト市に入らないため、デトロイト市の財政には寄与していない。

 結果的にデトロイト市内には、閉鎖された自動車の生産ラインや古い住宅地だけが残る状況となっており、これらが再開発されるまでには、まだ時間がかかる可能性が高い。デトロイト市の財政はそのタイミングまでは持ちこたえられなかったということになる。
 治安が悪く昼間でも危険といわれたデトロイト市中心部だが、徐々に再開発も始まっている。破綻によって債務が整理された後は、多少回復のペースも早まるかもしれない。

 - 社会, 経済 , , , , , , ,

  関連記事

yahoojapan
ヤフーの通販サイト出店無料化は、近い将来マクロ経済にも影響を与える?

 ヤフーがネット通販サイトとオークションサイトへの出店料を無料にするという大胆な …

girishagikai
ギリシャの国民投票は緊縮策にNo。約束手形の発行となれば、事実上のドラクマ復活?

 IMF(国際通貨基金)など国際機関に対する支払いができない状態にあるギリシャで …

banksy
謎の覆面画家バンクシーがニューヨークで活動中。アートの価格形成を皮肉る実験も

 英国の著名な覆面ストリート・アーティストであるバンクシーが、現在1カ月の期間限 …

sheruidemitu
経産省の主導の「上から」の再編にノー。出光創業家が昭和シェルとの合併に反旗

 石油元売り大手である出光興産の創業家は2016年6月28日、同社の株主総会にお …

bukkajoushou
物価は何と7カ月連続のマイナス。一方、消費は物価にかかわらずやはりマイナス続き

 このところ物価が厳しい状況に追い込まれている。消費者物価指数が何と7カ月連続の …

skytree00
現代版バベルの塔「スカイツリー」で電波障害が多発。東京はもはやソドムと化した?

 東京スカイツリーで大量の電波障害が発生している。毎日新聞が報じたところによると …

abeamari201409
安倍首相が年功序列賃金の見直しに言及。アベノミクス初の構造改革?

 政府は2014年9月29日、政府、経済団体、労働団体の代表らが雇用や賃金につい …

seiketsudo
世界の汚職調査ランキングが話題に。でもどうやって調べているのか?

 ドイツを本拠地する非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナル …

sharp
シャープがまさの赤字転落。だがこの事態は昨年からすでに予想されていた

 業績回復のメドが立ったと思われていたシャープに再び暗雲が漂っている。2015年 …

cameronpanama
パナマ文書を巡り、英キャメロン首相が自らの納税情報を公開。給料は意外に安かった

 パナマから流出したタックスヘイブン(租税回避地)関連文書、いわゆるパナマ文書を …