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iPS細胞移植の記事はウソだった。誤報が起きる背景を探る

 

 読売新聞が、iPS細胞の移植に関して行った報道が、誤報であることが明らかになった。

 読売新聞は、米ハーバード大客員講師を名乗る森口尚史氏が人工多能性幹細胞(iPS細胞)を心筋細胞に変え、6人の患者に移植する治療を行ったと報道。だがその後、森口氏の研究成果について疑問を呈する声が相次ぎ、読売 新聞は13日付朝刊で、「同氏の説明は虚偽で、一連の記事は誤報」とする記事を掲載し誤報であることを正式に認めた。

 この事件は日本のジャーナリズムが抱える根本的な問題をよく表した事件である。たまたま読売新聞がひっかかってしまっただけで、他紙にも十分に起こりえることだ。

 このような誤報が起こってしまう背景には、ふたつの要因がある。

 ①記者の専門性の欠如
 ②権威主義

 日本には科学技術に精通したジャーナリストはほとんどいない。というよりも大手の新聞社や雑誌社にはほとんどいない、というのが正しい。米国では、博士号を保有する科学担当記者や医者出身の医療記者などがゾロゾロいる。人材の流動性も高い。
 日本では終身雇用で守られたゼネラリストの記者ばかりだ。ほとんど公務員並みのレベルといってよい。これでは専門分野の取材ができるわけがない。

 もうひとつは記者クラブに代表されるような権威に媚びる姿勢だ。
 読売新聞の記者は森口氏が名乗る「ハーバード大客員講師」「東京大医学部iPS細胞バンク研究室長」という肩書きを疑いもしなかった。もしこれが名前の知られていない大学であれば、記者は見向きもしなかっただろう。

 学会のことをよく取材し、ある程度の専門知識があれば、インチキ論文の発表など、実は日常茶飯事であることくらい知っているはずだ。成果を捻じ曲げて発表する人のブラックリストも存在している。
 学会といってもしょせんは人間の集まり。インチキとはいわないまでも、ほとんど意味のない成果を誇張して発表する人はザラにいる。この世界の常識として「新しい論文を見たらどの部分を誇張しているのかを探るのが最初の作業」(国立大学准教授)なのだ。

 京都大学の山中教授がノーベル賞をもらったことでiPS細胞の話題に食いつき、東京大学やハーバード大の肩書きを信用して記事を書いているようでは、また同じ過ちを繰り返すだろう。

 - マスコミ

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