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安倍首相が集団的自衛権の議論再開を表明。改憲論者にはむしろ逆風?

 

 安倍内閣の長期政権化が見えてきたことで、集団的自衛権に関する議論が本格化しつつある。安倍首相は22日の記者会見で集団的自衛権に関する議論を再開する方針であることを明らかにした。
 参議院において自民党は単独過半数には達していないものの、公明党との連立はその役割を終えつつある。集団的自衛権に関する憲法解釈や憲法改正に慎重な公明党の影響力は低下しており、議論が加速するのはほぼ確実な状況といえる。

 安倍首相の最終目標は憲法改正にあり、改憲を望む勢力は、集団的自衛権の憲法解釈をきっかけに、最終的には憲法改正の議論につなげたい考えだ。だが集団的自衛権に関する議論は、ややもすると憲法改正に対して逆効果となる可能性もあり、微妙なテーマともいえる。

 そもそもなぜ憲法を改正するのかという理由には、大きく分けて二つある。ひとつは日本には自主憲法が必要だからというもの(敗戦をきっかけに米国に押しつけられたという成立過程そのものを問題視している)、もうひとつは軍事力が行使できるよう憲法9条を改正する必要があるからというものである。もちろんその両方ということもあるだろう。

 ただ後者の問題については、戦後活発化した左翼運動の影響で、民主国家が本来持つ権利が否定されていたという日本特有の政治的理由が大きい。つまり、国連憲章などを持ち出すまでもなく、民主国家であれば、集団的自衛権は当然に保持しており、本来であればあまり議論するような対象ではないからである。

 石破幹事長も現憲法下で集団的自衛権の行使は可能であると発言しており、確かにこれは従来の政府見解とは異なっている。だが安全保障に関する政府見解は、55年体制という政治的土壌の中で、何とか自衛隊を合憲化するために編み出した些末な解釈論でしかない。内閣法制局という行政機関(司法ではない)が事実上の自衛隊の合憲判断を行ってきたという状況そのものが異常なことであり、国際的な常識や民主主義の成立過程という歴史を考えれば、典型的な英米法である現憲法において集団的自衛権を行使できるのは当然ということになる。

 だがもしそうでれば、自主憲法という成立過程そのものを問題視する場合を除き、わざわざ憲法を改正する必要性が薄れてくる。最近の憲法改正に関する議論では、96条の先行改正論が盛り上がるなど、改正そのものが自己目的化したような傾向も見受けられる。

 自民党内部では、国論を二分する憲法改正ではなく、集団的自衛権の行使を落とし所にした方がよいとの声も一部から上がっている。ゴリゴリの改憲論者に見える安倍首相も、実は現実的な解決策を選択する余地を残している可能性もある。
 いずれにせよ、集団的自衛権に関する議論の再開は、なぜ憲法を改正するのかという、この問題の本質を浮き彫りにすることになるだろう。

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