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安倍首相の東南アジア歴訪が示す「国際競争力なくして安全保障はない」という事実

 

 安倍首相は7月25日午前、3日間の日程でマレーシア、シンガポール、フィリピンの3カ国を公式訪問するため羽田空港から政府専用機で出発した。マレーシア、フィリピンについては6年ぶり、シンガポールについては11年ぶりの公式訪問となる。TPP交渉における日本の立場に理解を求めるとともに、東南アジア各国との通貨協定の締結を目指す。

 日本はこの10年、デフレへの対応や政局の混乱など内向きな事情が続き、アジア各国に対してほとんどまともな外交活動を行ってこなかった。
 首相の訪問について記者会見に臨んだ菅官房長官自身も「(これほど長期にわたって各国への訪問がなかったことについて)自分自身も驚いている」と述べたくらいだ。

 今回の歴訪では、経済連携に加えて各国と通貨協定の締結について話合いが行われる予定。アジア各国との通貨協定は1997年のアジア通貨危機のような事態が起こった際、資金を融通し通貨の安定を図るためのもの。2005年には13カ国が参加する多国間の通貨協定(チェンマイ・イニシアティブ)が締結されているほか、個別の通貨協定も結ばれている。
 ただ多国間の通貨協定は利害の調整に時間がかかり機動的な運営ができないことから、二国間協定を強化しようという動きが活発化していた。2013年5月には、ASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議において、タイ、シンガポール、マレーシアとの通貨協定締結に向けて議論を進めることが確認されており、今回の協議はこの結果を受けたものである。

 二国間の通貨協定については韓国とも締結していたが、領有権問題をきっかけに韓国との関係が悪化したことで、協定は延長されていない。また中国も景気減速が鮮明になっており、一部では金融システムが混乱する可能性も指摘されている。そのような中での東南アジア各国との通貨協定の締結は、外交安全保障の面で大きな意味を持ちそうである。

 日本がアジア地域における金融安定化プログラムにおいて主導権を握れるのは、過去に蓄積した膨大な貿易黒字とそれにともなう外貨準備が存在しているからである。このことは、強力な経済と金融なくして、外交も安全保障も存在しないことを如実に表している。
 最近の日本には、現状維持を最優先し、無理に国際競争力を高めなくてもよいという風潮があるが、こうした考えは甘い幻想にすぎない。現在のように日本企業が国際競争力をなくした状況が続けば、いずれはこのような外交を行うことも不可能になるからである。

 現在の日本は過去の資産でなんとかプレゼンスを維持できている状態だ。日本に残された時間は少ない。

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