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世代間不公平は考慮せず。社会保障制度改革国民会議の報告書案はかなり後ろ向き

 

 政府の「社会保障制度改革国民会議」は7月29日、年金や医療など社会保障分野の改革を盛り込んだ報告書案を提示した。正式な報告書は8月に安倍首相に提出される。

 国民会議は、社会保障制度のあり方について議論するための有識者会議で、ここでの議論は今後の社会保障制度改革のベースになる。
 報告書の案では、社会保障制度改革は、若い世代の安心につながることが重要だとして、子育て支援などの少子化対策について強調する内容となっている。だが若い世代が不安に思っているのは子育て支援が少ないことではなく、将来、年金がもらえなくなるかもしれないという社会保障制度そのものへの不安なのだが、その点については明確な方向性はほとんど示されなかった。

 社会保障制度の維持について報告書では、従来の「年齢別」から「能力別」への切り替えをうたっている。つまり所得の高い高齢者への給付を減らし、所得が低い人に重点配分するという形で全体の支出を減らす方針だ。ただこうした取り組みで改善できる余地は少なく、年金の持続可能性問題を根本的に解決することは困難である可能性が高い。

 日本の年金制度は、個人が老後の資金を積み立てて、それを年金という形で受給するという個人完結型ではない。あくまで下の世代が上の世代を私的に扶養するという「家制度」の考えに基づいて制度が設計されており、高齢者の人数が増えれば、若年層の負担は際限なく増えてくる仕組みになっている。少子化が進んでいる現在、制度を維持するためには、自分が積み立てた分を自身が受け取るという個人主義的な制度への移行が必要という意見は根強い。
 だが報告書ではこの点について、「年金制度は子どもが親を扶養するという私的扶養を社会化したものであることに十分留意が必要」と明言しており、現行の制度を変更する余地はないとしている。さらに「公的年金の給付と負担だけをみて(世代間)の損得論を議論するのは適切でない」として、若年層の負担が大きいことについては事実上、考慮しないとしている。

 持続可能性への対策としては、高所得者への給付見直しに加えて、年金受給開始年齢の引き上げやマクロ経済スライド制度の見直しなどが盛り込まれている。
 現在、年金の受給開始年齢は65歳への引き上げが始まっているが、これを67歳から68歳までさらに引き上げるプランが検討されている。だが現実には75歳程度まで引き上げないと制度の維持は困難という見方も多い(本誌記事「年金運用益が過去最高。だが運用原資は毎年4兆円ずつ減少しているという事実」参照)。また現在は物価上昇に応じて年金額も増額される仕組みになっているが、これについても見直しが検討されている。欧州ではすでに物価スライド制を廃止している国も出てきており、これも避けて通ることはできないだろう。

 基本的には現行制度のまま、給付額を減額し、給付を受ける時期を遅くするという形で、制度を維持するということになる。いわゆる世代間不公平の問題は解消されそうにない。

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