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麻生財務省のナチス発言に見る、自民党中枢部の感覚の「古さ」

 

 憲法改正をめぐって麻生財務相が「ナチスの手口を学ぶべき」という趣旨の発言をしたして非難の声が高まっている。米国のユダヤ人人権団体でホロコースト問題などについて激しい抗議運動を行っている「サイモン・ウィゼンタール・センター」は発言の真意を明らかにするようにとの批判声明を出している。

 麻生氏の発言は、ジャーナリストの桜井よしこ氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」が都内で開催したシンポジウムで出てきたもの。
 この中で麻生氏は「ナチスは軍事力で政権をとったわけではなく、選挙で静かに選ばれた。憲法改正も喧噪の中ではなく、静かに着実に進めるべきだ」という趣旨の発言を行った。「ナチスの手口」という表現はこの中の一部として出てきたものである。全体として発言を見るならば、ナチスを賞賛するというよりは、憲法改正は目立たないよう着実に進めるべきというニュアンスが強い。

 ナチスによるワイマール憲法の改正を引き合いに出したことで、欧米やアジア各国から批判が出てくることが予想される。だがそれとは別に、今回の麻生氏の発言は、憲法改正をめぐる世代的な認識の差を浮き彫りにする形になった。

 憲法改正を目指す理由には大きく分けて二つある。ひとつは憲法9条で軍事力の行使を制限していながら、現実的には大規模な軍事力を保有しているという現状との整合性を確保するというもの。もうひとつは、敗戦によって米国から「押しつけられた」憲法は感情的に受け入れられないというものである。
 おそらく麻生氏は後者であり、憲法改正そのものが目的であり悲願になっていると思われる。騒がれてしまうとせっかく進みかけた憲法改正が台無しになってしまうという危機感が発言からは読み取れる。

 だが若い世代を中心に、憲法と自衛隊に関する意識は着実に変わりつつある。20代ともなると、生まれた時から日本はすでに世界屈指の軍事力を保有した国であり、日米安保体制についての批判ともほとんど無縁であった。また民主国家であれば、当然に集団的自衛権を保持しているという事実もかなり浸透してきており、現憲法のまま必要に応じて軍事力を行使することの障害はほぼなくなっているといってよい。現憲法下でも十分に集団的自衛権の行使は可能と発言した石破幹事長などは若い世代に近い感覚を持っていると思われる。

 日本は戦後しばらくの間、左翼運動が活発であったことから、憲法擁護と憲法改正をめぐって、かなり幼稚な感情的対立が続いてきた。憲法擁護派は何が何でも憲法擁護であり、改正派は何が何でも改正であった。だが時代変わり、従来のような憲法に関する神学論争はあまり意味をなさなくなっている。
 その意味で、何としても憲法改正という麻生氏の発言は、安倍首相を含む、現在の自民党中枢部の感覚の「古さ」を象徴しているといえるだろう。

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