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社会保障制度改革国民会議の最終報告。年金は現状維持で、世代間不公平は解消されず

 

 社会保障制度のあり方に関して議論する政府の「社会保障制度改革国民会議」は8月5日、年金や医療など社会保障分野の改革を盛り込んだ報告書を正式決定した。6日に安倍首相に提出する。

 国民会議は、社会保障制度のあり方について議論するための有識者会議で、ここでの議論は今後の社会保障制度改革のベースになる。
 報告書は高齢者に手厚いとされる現在の社会保障制度を全世代型に改め、若い世代の安心につなげるとしている。しかし、実際には社会保障分野における最大の関心事である年金制度の現状維持を強調するなど、全世代型への転換とはほど遠い内容となっている。

 報告書は、社会保障制度改革は、若い世代の安心につながることが重要であると指摘、子育て支援などの少子化対策について強調している。だが若い世代が不安に思っているのは子育て支援が少ないことではなく、将来、年金がもらえなくなるかもしれないという年金制度そのものへに対する不安である。だが報告書では、その点については明確な方向性はほとんど示されなかった。

 社会保障制度の維持について報告書では、従来の「年齢別」から「能力別」への切り替えをうたっている。つまり所得の高い高齢者への給付を減らし、所得が低い人に重点配分するという形で全体の支出を減らす方針だ。ただこうした取り組みで改善できる余地は少なく、特に年金制度の持続可能性問題を根本的に解決することは困難である可能性が高い。

 日本の年金制度は、個人が老後の資金を積み立てて、それを年金という形で受給するという個人完結型ではない。あくまで下の世代が上の世代を私的に扶養するという「家族制度」の考えに基づいて制度が設計されており、高齢者の人数が増えれば、若年層の負担は際限なく増える仕組みになっている。少子化が進んでいる現在、制度を維持するためには、自分が積み立てた分を自身が受け取るという個人主義的な制度への移行が必要という意見は根強い。
 だが報告書ではこの点について、「年金制度は子どもが親を扶養するという私的扶養を社会化したものであることに十分留意が必要」と明言しており、家族制度を基本とした現行の制度を変更する余地はないとしている。さらに「公的年金の給付と負担だけをみて(世代間)の損得論を議論するのは適切でない」として、若年層の負担が大きいことについては事実上考慮しないとした。若年層に不公平感が出やすい環境にあり、これに対する配慮が必要であることは明記されたが、基本的には制度の変更をすべきではないという主張だ。

 年金の持続可能性への対策としては、高所得者への給付見直しに加えて、年金受給開始年齢の引き上げやマクロ経済スライド制度の見直しなどが盛り込まれた。だが現実の状況はかなり厳しい。
 現在、年金の運用原資は120兆円ほどあるが、受給者への給付増加で資金は毎年4兆円ずつ減少している。今のところ年金原資の減少に合わせて、受給開始年齢を引き上げていく以外に、根本的な解決策はないというのが現実だ。いわゆる世代間不公平の問題は解消されそうにない。

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