アマゾン創業者がワシントンポスト紙を買収。ジャーナリズムのWeb化がさらに加速
米アマゾンドットコムの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるジェフ・ベゾス氏は、米国の高級紙ワシントンポストを買収する。買収金額は2億5000万ドル(約243億7500万円)で、買収側はアマゾンドットコムではなく、ベゾス氏個人となる。
米国では紙媒体を用いた商業ジャーナリズムの凋落が激しいが、もっとも権威のある新聞社のひとつがネット企業オーナーに買収されたことは、その流れが加速していることをあらためて印象付ける形となった。
ワシントンポスト紙は1877年創刊の老舗新聞。部数はそれほど多くないが、米国の政界関係者のほとんどが購読しており、政治への影響力は極めて大きい。同紙を世界に知らしめるきっかけとなったのは、なんといってもウォーターゲート事件のスクープといってよい。
同紙のボブ・ウッドワード記者らが綿密な取材に基づき、ニクソン元大統領による盗聴疑惑をスクープ、現職大統領の辞任という米国最大の政治スキャンダルのきっかけを作った。
こうした思い切った報道が実現できたのは、同社がグラハム一族による個人所有だった点が大きいといわれている。2001年に亡くなるまで同社の会長を務めたキャサリン・グラハム氏は、ウォータゲート事件以降、ワシントンの政界で最も影響力のある女性の一人といわれた。
だが時代は変わり、ネット媒体が躍進。ここ数年でワシントンポストの売上げは半分近くに減少していた。現在ワシントンの政界でもっとも影響力のある女性は、新興のWeb媒体であるハフィントン・ポストの創業者アリアナ・ハフィントン氏ともいわれている。
新オーナーとなるベゾス氏は基本的に経営には関与せず、現在の運営チームをそのまま維持するといている。ただ、ネット時代に合わせた経営改革は実施するとしている。
ベゾス氏はアマゾンを創業する前は証券会社のアナリストを務めていた。ジャーナリズムに対しては愛着があるといわれており、すでにビジネス系のWeb媒体である「ビジネスインサイダー」に出資している。今回の買収も、アマゾン社によるものではないため、ビジネス上の直接的な連携は当分ないと考えられる。ただ長期的にはアマゾンとの何らかの連携が模索される可能性があるほか、新興Web媒体と老舗高級紙の両方を所有することになったベゾス紙のワシントンでの影響力拡大を指摘する声も上がっている。
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