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貿易赤字だが経常収支黒字の傾向は変わらず。日本は「成熟した債権国」の段階に入った

 

 財務省は8月8日、6月の国際収支を発表した。最終的な国の儲けを示す経常収支は3363億円の黒字となった。黒字となるのは5カ月連続。天然ガスや電子部品の輸入増で貿易赤字が拡大したが、海外への直接投資から得られる利益が増加したことで経常黒字を維持した。季節調整済みの数字では、先月とほぼ同水準の経常黒字となっており、貿易赤字を投資収益でカバーするという状況がほぼ定着したとみてよい。

 最近はあまり引き合いに出されないが、国際収支には発展段階説と呼ばれるものがある。途上国から成熟国になるにしたがって、国際収支の状況が変化するという考え方である。
 日本は輸出主導の途上国型経済の段階はとっくの昔に通り越している。ここ10年は、貿易黒字を維持する一方、海外への投資が加速(資本収支の赤字)して投資収益が増加するという「未成熟な債権国」の段階であった。だがこのところの貿易赤字の定着、所得収支の増加と経常収支の黒字維持という状況は、次のステージである「成熟した債権国」にシフトしていることを示している。

 財務省は6月の国際収支と同時に、2013年上期の国際収支も発表している。上半期を通じての国際収支で特徴的だったのは、投資収益における直接投資の増大である。上半期の投資収益約8.7兆円のうち、直接投資によるものは約3.1兆円で投資収益全体の約35%を占めている。昨年の上半期にくらべてその割合は上昇しており、今後もしばらくは増加傾向が続く可能性が高い。
 これは日本企業の工場が海外に移転したことによる影響が大きいと考えられる。日本国内の工場で生産した部品を海外に輸出し、現地で最終組み立てを行っていたメーカーは多い。だが最近は、部品の製造もすべて海外で完結させるところが増えてきている。国内にあった部品の製造工場を現地法人という形で海外に移転すれば、部品の輸出による貿易黒字は減少するが、代わりに現地法人からの配当収入が増加する。これが直接投資による投資収益が増加した理由である。

 貿易黒字によって得た外貨は多くが米国債で運用されており、その利回りには限度があった。だが直接投資の場合には、金融商品よりも高い利回りが期待できるため、投資収益の拡大に寄与することになる。製造業の海外移転がうまくいっている間は、日本の経常黒字も一定水準で維持される可能性が高い。

 日本の産業は完全に停滞しており、国内に十分な投資機会が存在していない。資金余力を今後も海外投資という形で資本流出させるのか、国内の投資機会を拡大しそこに吸収させていくのか、小康状態ともいえるこうした環境が維持されている間に、今後の方向性について決めておく必要がある。
 国際収支発展段階説における次のステージは「債権取り崩し国」であり、これは最終段階を意味している。どのタイミングで日本がこのステージに突入するのかは誰にも分からない。

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