ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

日銀の量的緩和策は果たして効果を上げているのか?米国のQEと比較してみると

 

 日本銀行は8月8日、金融政策決定会合を開催した。量的緩和の継続を全員一致で決めたほか、景気の現状判断について「緩やかに回復しつつある」とした前回会合の判断を据え置いた。景気判断を現状維持とするのは9カ月ぶり。企業の設備投資が伸び悩んでいることなどから、慎重姿勢に転じた。

 日銀の量的緩和策は、当初の予定通り着実に実施されているが、企業の設備投資になかなか資金が向かわないことから、その効果については見解が分かれている。
 量的緩和に肯定的な人は、マネタリーベース(日銀が直接供給するお金)を増やしていけば、時間はかかるが着実にマネーストック(経済全体に出回っているお金)も増大し、設備投資も回復すると考えている。一方、量的緩和に否定的な人は、日本の経済構造が硬直化しているので、資金を供給しても企業の設備投資にはお金は回らないと考えている。

 最終的にどうなるのかを判断するにはもう少し時間が必要だが、現実点において量的緩和策はどの程度の効果を上げているのだろうか?
 4月の量的緩和策の実施以後、4カ月が経過したが、この間にマネタリーベースは約19%増加している。日銀が国債を積極的に購入した結果である。一方、マネーストック(M3)の方は約1.9%増加している。日銀が10%資金供給量を増加させると社会全体では約1%お金が増える計算になる。
 米国ではこれまでに3回、量的緩和策を実施している(QE1からQE3)。同じように量的緩和策の開始から4カ月時点での効果を検証すると、米国の場合、10%の資金供給で社会全体のお金(M2)は3%増加している(過去3回の平均)。日本と米国では状況が異なるが、単純に比較すると米国の方が3倍効果が高いことになる。

 米国の方が人、モノ、カネの回転が速く、量的緩和の効果がただちに顕在化している可能性は高い。この点で日本の経済構造に問題があると指摘する人の意見には一定の説得力がある。だが米国の3分の1とはいえ、マネーストックが着実に増加しているのも事実である。このまま量的緩和を続けていれば、いずれは企業向けの貸出も増え、設備投資に資金が回ることになるのかもしれない。

 注意が必要なのは、現時点では公共事業による経済効果(2012年度補正予算を用いた総事業費20兆円の緊急経済対策)が大きく、量的緩和効果との判別が難しいという点である。公共事業は来年度には大幅に減少する予定なので、本当の効果を見極めるにはもうしばらく時間がかかりそうだ(本誌記事「企業の設備投資予定額が大幅増。だが公共事業の影響も大きく継続性があるかは不明」参照)。
 また米国に比べて効果が顕在化するスピードが遅いのだとすると、ひとたびマネーストック増大が進み始めると、今度はそう簡単には止められないということを意味している。米国のような回転の速い社会は、急加速してしまうリスクもあるが、ブレーキをかけるのも容易だ。だが回転が遅い社会は急加速が難しい分、ブレーキをかけるのはさらに難しい。

 - 政治, 経済 , , , , ,

  関連記事

hitachieikoku
日立が英国鉄道事業で水漏れトラブル。だが、もっと大きな逆風が吹いている?

 日立が総力をあげて取り組んできた英国の鉄道事業で、新型車両のお披露目の当日に客 …

no image
ダイバーシティを標榜する日本IBM、元社長が盗撮でイメージがガタ落ち

 日本IBMの大歳卓麻元社長が、女性のスカート内を盗撮したとして、警視庁の取り調 …

rubio
米大統領選。共和党の隠れた大本命、マルコ・ルビオ氏とはどんな人?

 米国の大統領選に共和党から立候補を表明したマルコ・ルビオ上院議員がメディアから …

abekaisan20141113
7~9月期のGDPは予想通り思わしくない可能性が大。増税スキップは政治判断へ

 11月17日に発表される7~9月期の実質GDPの数字が思わしくない可能性がさら …

houjinzei2014
法人減税をめぐって外形標準課税拡大の議論が政府税調でスタート

 法人税減税をめぐって、赤字法人への課税を強化するプランが浮上している。具体的に …

saujisaruman
サウジアラビアのサルマン国王が1000人を引き連れて異例の来日。背景には強烈な危機感

 サウジアラビアのサルマン国王が2017年3月12日、来日した。13日には安倍首 …

joumuinmember
完全保存版!習政権2期目、政治局常務委員メンバー相関図。習氏の3期続投が視野に

 習近平政権2期目の布陣が明らかとなった。後継候補となる若手は登用されず、習氏の …

tokyofukei001
2017年1~3月期のGDPは、とうとう名目値がマイナスに転落。完全にデフレに逆戻り

 内閣府は2017年5月18日、2017年1~3月期のGDP(国内総生産)速報値 …

hanedanarita
羽田・成田の地下鉄建設に年金と生保資金を活用。本当に大丈夫なのか?

 国土交通省は2020年代の開業を目指している羽田・成田を結ぶ地下鉄路線の建設に …

nichigin04
7~9月期GDPのマイナス予想で高まる追加緩和期待。だが日銀のジレンマは大きい

 7~9月期のGDP(国内総生産)がマイナス成長となる可能性がさらに高まってきた …